スマートフォンの普及に伴い、近年「スマホ離婚」と呼ばれる離婚パターンが増えているようです。
スマホ離婚とは、夫婦で同じ空間にいても、どちらか(あるいは両方)が、スマホばかりいじっていて夫婦間の会話がなくなることによって関係が悪くなってしまい、その結果、離婚にまで至るケースのことです。
それでは、スマホをいじるという行為そのものが、実際に法的な離婚理由として認められるのでしょうか。段階別に解説したいと思います。
■離婚が法的に成立するかは「婚姻関係の継続」が可能かどうか
まず、夫婦間の合意の元ではなく、どちらか一方が離婚を拒否した場合でも法的に離婚が認められるためには、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」が必要となります。
スマホばかりいじっていて、夫婦間の会話が全くなくなり、もはや他人のような関係でしかなくなっているのであれば、婚姻関係を継続し難い状態と言えるでしょう。
一方で、スマホをいじっていても、夫婦間の会話がある程度存在するのであれば、婚姻関係を継続し難い状態とまでは言えません。要するに、スマホをいじっていることが離婚理由になるのではなく、それによって夫婦間の会話や交流がどの程度希薄になっているのかによって、婚姻関係を継続し難い状態か否かが判断されるということです。
■一方、スマホを利用した不貞行為が発覚した場合は…
ではスマホをいじっているという行為が、確実に離婚原因として認められ、慰謝料も請求できるようなケースは具体的にはどのような場合でしょうか。
たとえば、食事中も子育て中もスマホ片手の夫に対し、堪忍袋の緒が切れた妻が夫のスマホの中身を確認すると、出会い系アプリを使って女性とホテルで落ち合う約束メールの履歴までが発覚したとします。
このようなケースでは、後日、約束どおりに不貞相手とホテルで落ち合ったことやホテルで不貞行為をしたこととして推認されます。よって十分、不貞行為を立証する証拠になり得ますので、確実に離婚原因として法的にも認められます。
とはいえ、“スマホいじり”という行為自体が直接的な離婚原因というわけではなく、その先にある不貞行為が法的な離婚認定要因となるわけです。
このようにスマホを起点とした夫婦間のトラブルは、ほかにもソーシャルゲームに夢中になりすぎて夫婦の会話が減少してしまったり、SNSを通して不貞行為が発覚してしまったり、と多種多様です。法的にも立証され得る行為は多いので、円満な夫婦生活を望まれる方は、家庭ではスマホに依存しすぎないよう心掛けた方が良いかもしれませんね。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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