なかなか帰ってくれない訪問販売の業者…玄関ドアに足を挟まれた時点で不法侵入になる?

訪問販売にきた業者が、玄関のドアに足を挟んできた、無理やり玄関に入ろうとしてきたなどという話はしばしばあります。

これらの行為は不法侵入の可能性が考えられますが、これだけの行為で不法侵入として罪を問うことはできるのでしょうか。また、ポスティングするためにマンションなどの敷地に入る行為はどのように扱われるのでしょうか。法的な解釈をケース別に紹介していきます。

*画像はイメージです:http://www.shutterstock.com/

 

■訪問販売・債権取り立て側がドアに足を挟む行為は?

刑事上の住居侵入罪が既遂となるのは、住居内に体の全部を入れた時点とされています。

したがって、足を挟んだだけでは住居侵入の既遂にはならないようにも思えますが、住居侵入罪は、住居の囲繞地(敷地)部分も含むので、玄関前まで入り込んだ時点で、住居侵入罪は既遂となる可能性があります。

他方、住居侵入罪は、単に住居へ立ち入るだけではなく、住居権者(管理者)の意思に反する(不穏な態様の)立ち入りでないと、成立しません。

そうすると、訪問販売や債権取り立てで穏便に玄関前までいくだけでは、原則として住居侵入罪にはならないと考えられます。

ただし、玄関ドアに足を挟み入れる行為は、明らかに住居権者の意思に反しており、かつ、不穏当極まりない態様なので、その時点で、住居の囲繞地に立ち入ったとして、住居侵入罪が成立すると考えることもできます。

また、住居権者が退去を求めたにもかかわらず、正当な理由なく相当時間内に退去しないことで、不退去罪が成立を認めることも可能です。

 

■民事上、不法侵入となるポイントは権利侵害・違法性

民事上の不法侵入は、不法行為といえるだけの権利侵害・違法性があるといえるかがポイントとなります。

例えば、取り立てのために玄関ドアに足を挟み込む行為は、刑事上の犯罪だけではなく、民事上も不法行為が成立するでしょう。ただし、損害としては、慰謝料程度しか認められません。

 

■不法侵入とされる意外なケースとは?

警察署の塀に上った行為が、建造物侵入とされた例があります。塀も警察署の囲繞地(敷地)もしくは建造物の一部という考え方です。

逆に、マンションでの望まないポスティングは、オートロック外の平穏な態様で行われる限り、基本的には、住居侵入にはならないでしょう。ただし、チラシのポスティングを明確に禁止している場合には、管理者の明確な意思に反しており、住居侵入が成立する可能性はあります。

 

*この記事は2015年7月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)

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星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

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