近年、正規雇用(正社員採用)が減少し、非正規雇用(派遣、パートタイム、有期雇用)が増加しつつあるのはよく知られているところです。
今回は、非正規雇用の中の派遣社員の事前面接について書いていきます。というのも、派遣社員の事前面接が相当数行われているという実態があるからです。
派遣社員の特定目的行為の禁止とは?
労働者派遣については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、いわゆる「派遣法」が規定しています。
そして、派遣法の26条7項が「労働者派遣(紹介予定派遣を除く)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。」と規定し、紹介予定派遣の場合を除き(紹介予定派遣については派遣法2条6号を参照)、派遣労働者の特定目的行為を禁止しています。
少しわかりにくい条文ですので、以下で丁寧に説明していきます。まず、26条7項にいう「労働者派遣の役務の提供を受けようとする者」とは派遣先を指します。
次に、同条が禁止しているのは「派遣労働者を特定することを目的とする行為」であって、特定行為そのものではないことに注意が必要です。
ここにいう「特定することを目的とする行為」(特定目的行為)には事前面接や派遣社員の指名といった特定行為のみならず、派遣先への事前訪問請求、派遣社員の履歴書の送付請求といった特定準備行為も含まれます。さらに、派遣先が派遣社員の「性別」や「年齢」で限定することも特定目的行為に該当します。
しかし、同条は「してはならない」とは定めておらず、「しないように努めなければならない」と定めているにすぎません。
すなわち、同条は、派遣先に努力義務を課しているにすぎないんですね。そのため、派遣先が特定目的行為を行っても、処罰されることがなく、派遣元・派遣先間の労働者派遣契約が無効になるわけでもありません。
このように努力義務しか規定されていないことに加え、優秀な派遣社員を確保したいという派遣先の目的もあり、事前面接等の特定目的行為を行っている派遣先・それに協力する派遣元がそれなりに存在するという実態につながっています。
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