■時間外手当の考え方
時間外手当は、労働者が労働基準法で決まっている労働時間(1週間について原則40時間、1日について原則8時間)を超えて行った労働(=時間外労働)に対してもらえる手当のことです。
労働者は、雇い主の指示によって時間外労働を行った場合、通常の労働時間の労働でもらえる賃金の2割5分以上(休日労働の場合は3割5分以上、深夜労働の場合は2割5分以上)の割増賃金を請求することができます。
例えば、通常の労働時間の1時間当たりの単価が3,000円で1日だけ10時間労働したとすると8時間を超える2時間分が時間外労働ですから、この分について7,500円(3,000円×1.25×2時間=7,500円)の割増賃金を通常の賃金とは別に請求することができるわけです。
■固定残業代の考え方
固定残業代は、時間外手当を月いくらというように固定にした場合の残業代です。
固定残業代を決めること自体は違法ではありませんが、固定残業代を決めたとしても、「時間外労働に対して所定の計算方法による時間外手当を支払わないといけない」という労働基準法の内容に違反していけないことには変わりません。
時間外手当を固定にしたケースについては最高裁の判例もあります。
雇い主が時間外手当について基本給に含まれていると主張したケースですが、基本給のうち時間外手当に当たる部分を明確に区分して雇用契約上の賃金合意をし、かつ、労働基準法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払うことを合意した場合のみ時間外手当として有効と判断されています。
要するに、固定残業代にしたとしても、労働基準法所定の計算方法での時間外手当以上の金額を支払わないと違法ということです。
そういうことですので、労働者のモチベーションを上げるために固定残業代を設ける(=労働者は効率的に仕事をすれば少ない残業時間で固定残業代を受け取れる)のであれば良いことだと思いますが、労働コストを抑えるために固定残業代にするのは無意味ということになります。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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