ひき逃げの16歳少年に初適用された「未熟運転」とは何か

先日、16歳の少年が昨年の5月に施行された自動車運転死傷処罰法2条3号の「未熟運転致死罪」で起訴されたというニュースがありました。施行以来、未熟運転致死罪で起訴されるのは全国初だそうです。

未熟運転致死傷罪と無免許運転や過失運転致死傷とは別なのですが、これらはいったいどういう違いがあるのか。また、今回、なぜ少年に対して未熟運転致死罪を適用したのかについて解説したいと思います。

macha / PIXTA(ピクスタ)

●無免許運転イコール未熟運転ではない

未熟運転罪は、自動車の運転者が「進行を制御する技能を有しないで」自動車を走行させた場合に成立します。

ふつうは無免許だったら進行を制御する技能を有しないといえそうですが、いったん免許取消しになった人が免許を再取得しないまま運転していたなど、無免許でも運転技能が未熟とはいえない場合があります。

反対に、免許を有していてもペーパードライバーで運転技能が未熟な場合には「進行を制御する技能を有しない」に当たってしまうこともあります。そのため、無免許運転イコール未熟運転ではありません。

なお、過失運転致死傷罪は、未熟運転を含む危険運転の類型に当たらないときに適用されます。運転が下手でも上手でも過失があれば過失運転致死傷罪が成立し、無免許だった場合には刑が加重されます(自動車運転死傷処罰法6条)。

 

●今回の少年に未熟運転致死罪を適用した理由

少年は16才であり、本来免許を取得できない年齢です。そのため、無免許の上に一般的に運転技能を有していないといえるでしょう。

もっとも、非行少年が無免許運転で事故を起こすことはそこまでレアケースではありませんので、今回少年を未熟運転致死罪で起訴したのは以下のような理由があるからだと思います。

未熟運転致死罪が成立するには、自分が「自動車の運転技能が未熟であることの認識」(故意)が必要です。また、有罪にするためには、検察官が故意を立証できなければなりません。

報道では、少年が初めてハンドルを握ったことを重視しているとありましたが、その旨の少年や関係者の供述があるので、検察官は故意を立証できると思っていると考えられます。

その他、実際の運転状況に関する供述や事故を起こすかもしれないと思っていた旨の供述、防犯カメラの画像等により、故意を立証する予定といえましょう。

また、危険運転に対する厳罰化・処罰感情の高まりや、本件が悪質な事案であると判断したことからも、16歳の少年を検察官送致(逆送)して、無免許過失運転致死ではなく未熟運転致死罪で処罰することを考えたのかもしれません。

未熟運転致死罪は1年以上の懲役刑が言い渡されます。無免許運転をしないことはもちろんですが、ペーパー歴が長くて運転技能が怪しいと思いながら自動車を運転して事故を起こしてしまった場合にも本罪が適用される可能性がありますので注意が必要です。

 

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)

木川 雅博 きかわまさひろ

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