時給200円も・・・超低賃金で障害者を雇用することはナゼ許されている?

■最低賃金の減額の特例

最低賃金の減額の特例とは、都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額を認めてもらう制度です。

この制度の利用によって特例が許可された場合、雇い主は、国が定めた最低賃金額を下回った賃金額にすることできます。

こうした特例が認められる余地があるのは、障害者等の一般の労働者より著しく労働能力が低い人に雇用を確保するためです。

すなわち、最低賃金制度の原則を貫けば、雇い主は同じ賃金であればより優秀な人を雇いたいと思うわけですから、一般の労より著しく労働能力が低い障害者等は、雇ってもらえなくなることが考えられます。

しかし、特例によって最低賃金額を引き下げてもらえるのであれば、雇い主も、障害者等の雇用に前向きに検討するかもしれません。

そういった発想に基づく特例です。

具体的には、以下のような方について、最低賃金額の減額の特例が認められることがあります。

(1)精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方

(2)試用期間中の方

(3)基礎的な技術等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定められた方

(4)軽易な業務に従事している方

(5)断続的労働に従事している方

特例が許可された場合、雇い主は、国が決めた最低賃金額から労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で決められた率を乗じた額を減額した額と最低賃金額と扱えばいいことになります。

精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方の場合については、同じあるいは似た仕事をしている労働者で成績が最下位の者と労働能率を比較してその程度に応じた率を100分の100から控除して得た率となっています。

難しいですが、例えば、成績が最下位の人と比較して70%の労働能率ということであれば、100分の100から100分の70を差し引いた100分の30が厚生労働省令で決められた率ということになり、最低賃金額に100分の30を乗じた金額を減額した額(最低賃金額の70%)を特例の最低賃金額として扱えばいいということになります。

このように法律や厚生労働省令を文字通りに適用すれば、障害者の労働能率の低さによって特例による最低賃金額が200円といったこともあり得ます。

しかし、健康で文化的な最低限度の生活を営めるようにするという最低賃金制度の趣旨からすれば、そのような場合にはそもそも最低賃金を引き下げてまで障害者の雇用機会を確保するような状況でなく特例の許可が簡単に認められるべきでないと考えます。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

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