<JR不審火事件> 警察はなぜ「放火罪」で捜査をしないのか

JRに対する放火事件が多発しています。

ニュースによると、JR東日本管内で6件の不審火が発生していると言うことです。この事件について警視庁は、器物損壊罪及び威力業務妨害罪の容疑で捜査しているということです。

しかし、不審火、つまり放火の可能性があるのに、放火罪で捜査しないのは不思議な話ではないでしょうか?

なぜ放火をして器物損壊罪及び威力業務妨害罪で捜査がされるのかについて解説していきましょう。

カ電車駅山手線プリコーン / PIXTA(ピクスタ)

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●放火と器物破損の境目

物を故意に壊すと器物損壊罪になります。壊す方法に制限はなく、投げて壊したり、ハサミで切って壊したり、あるいは火をつけて燃やして壊しても同じです。

ところで、駐車中の車を燃やした事件等では、器物損壊罪ではなく放火罪で処罰された事案があります。これはどうしてでしょうか。

駐車場の車が燃えると、近隣住民は延焼するのではないか、あるいは、ガソリンタンクが爆発するのではないかと危惧します。このように近隣住民などが感じる恐怖感を「公共の危険」と言います。

駐車中の車という財産を毀損するだけなら器物損壊罪だけで処罰されますが、さらに「公共の危険」を生じさせると建造物等以外放火罪(1年以上10年以下の懲役)となり、重たい罪になります。

JRの事件では、「公共の危険」は生じていないと警視庁が判断したものと思われます。

放火の目撃者もいるということであり、「公共の危険」があったと判断してもおかしくはない事案かとも思われますが、警視庁は各種の捜査情報をもとに「公共の危険」がなかったと判断したのでしょう。

 

●公共の危険がなくても放火罪となるケースも

ちなに、人の住居などを放火した場合は、「公共の危険」が生じなくても、放火罪となります。住居を燃やす行為の悪質性・危険性が非常に高く、それだけで放火罪という重たい処罰をする合理性があるからです。住居以外の客体に対する放火の場合は、「公共の危険」が生じた場合だけ放火罪となります。

次に、警視庁は、威力業務妨害罪も捜査しています。これは、JRの財産を既存しただけではなく、JRの業務も妨害したと判断したからです。単に、JRの財産を燃やしただけでは、器物損壊罪あるいは放火罪となるだけですが、本件では、山手線などが長時間運行出来ず、JRの業務が妨害されたのは明らかですから、威力業務妨害罪と認定したものです。

 

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

 

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星 正秀 ほしまさひで

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