●当時の尊属殺重罰規定の問題点
当時の刑法200条(尊属殺人罪)は、刑法199条の普通殺人の刑を加重し、父母・祖父母などの尊属を殺害した場合は死刑または無期懲役に処するというものでした。
刑法上、執行猶予を付けるためには判決での宣告刑が3年以下の懲役である必要があるのですが、無期懲役の場合、罪を犯した者にどんなに酌むべき事情があったとしても、3年6ヶ月までしか減刑できないことになっています。
そこで、娘の弁護人は、当時の刑法200条は普通殺人の場合と比べて著しく不合理で憲法14条1項「法の下の平等」に反するなどと主張しました。
●最高裁判決の内容
最高裁の多数意見は、尊属を殺した場合に刑罰を加重すること自体は不合理な差別に当たらないとしつつも、刑法200条の法定刑が死刑または無期懲役に限られ、どんなに酌量の余地があっても執行猶予を付すことができない点で憲法14条1項に反すると判断しました。
そして、娘には刑法199条を適用し、執行猶予付の判決を下しています。
最高裁は違憲判決を出すのに消極的ではありますが、あまりにも法律が不合理なときには違憲判決を出すことを示す一例です。以前に比べれば最高裁は違憲判決を出すようになってきているので、今後も最高裁が憲法の番人という役割を果たすことを期待しています。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)
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