■無断利用は著作権法違反
他人の著作や論文を無断で自己の作品に利用する行為は、典型的な著作権侵害となります。
法定刑は10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金またはその両者の併科となる重大な犯罪行為です。
他人の論文や著作は、引用により、例外的に適法に自己の作品中に利用することもできますが、
(1)公正な慣行に合致すること
(2)報道、批評、研究などのための正当な範囲内であること
(3)引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること
(4)カギ括弧などにより引用部分が明確になっていること
といった要件が必要であり、大部分が引用で継ぎ接ぎだらけの論文では、適法な引用の要件は満たさない可能性が高いでしょう。
■学位の有効性
違法な無断引用・盗用による卒業論文で学位を取得して卒業した場合、学位取得、卒業の効力にも影響します。
ただし、学位認定や、卒業認定は、法律で基準や要件が決まっているわけでないので、基本的には、大学側の裁量権により、認定することになります。
大学のテストや授業で、どこまで出席したら単位が取れるのか、あるいは、テストで何点以上取れば単位認定されるかは、専ら大学(担当教授)が決定していますよね。
単位認定や卒業認定の裁量が大学にあることの帰結として、単位認定や卒業認定の際に前提とした事実に虚偽・不正があれば、大学側が遡って単位認定や学位授与を取り消すこともできます。
実際、論文に不正があったことを理由に、博士論文が取り消された事例は記憶に新しいと思います。
したがって、今後、大学の調査で論文の不正盗用が確定すれば、学位取消などの何らかの処分が下される可能性は十分あると予想されます。
■学位認定を争う方法
本題から逸れますが、学生の頃、単位を落とされて納得がいかなったことはありませんか?
過去には、大学による単位不認定が違法だと主張して裁判になったケースがありましが、裁判所は、単位不認定の妥当性は、司法審査の対象外であり、裁判で争うことができないと判断されています。
なお、修了認定(卒業)については、裁判で争うことができるとされています。
近年、コピペが容易にできるようになり、大学のレポートなどで他人の無断利用が問題視されていますが、著作権違反とならないよう、自力で単位取得に励みましょう。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
*写真:アキシオン / PIXTA(ピクスタ)
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