年金機構の流出事件、慰謝料は安めの「5,000~15,000円」程度?

■どの情報が漏れたから「いくら」という考え方ではない

「どのような情報が漏れたから、自分はいくらの慰謝料をもらえるはずだ」と言えるのであれば分かりやすいのですが、必ずしもそのような判断はされません。

情報流出があったということは、法的に見ればプライバシーが侵害がされたと評価することができます。そして、住所・電話番号・基礎年金番号・年齢・家族構成などの情報と氏名が結びついた情報は、プライバシーとして保護される情報と考えられます。

しかし、プライバシーとして保護される情報といっても、誤解を恐れずいえば、単なる個人を識別するための情報としての側面が強く、その人となりや行動を窺い知れるようなものでは必ずしもありません。

裁判所は、このような単純情報についての慰謝料を低く評価する傾向があります。

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■類似事例の慰謝料の認定額はいくら?

このような情報流出に関する事件の代表的な裁判例としては以下のようなものがあります。

住民番号、住所、氏名、性別、生年月日、転入日、転出先、世帯主名、世帯主との続柄等の個人情報が転売された宇治市住民基本台帳データ漏洩事件(大阪高裁平成13年12月 25日判決)では、1件あたり10,000円の慰謝料

氏名・住所・電話番号・学籍番号が記載された名簿を警察に提供した早稲田大学名簿提供事件(最高裁第2小法廷平成15年9月12日判決)では、1件あたり5,000円の慰謝料

住所・氏名・電話番号・メールアドレス・ヤフーメールアドレス・ヤフーID・申込日が漏洩したYahoo! BB顧客情報漏洩事件(最高裁第2小法廷平成19年12月14日判決)では、最終的に1件あたり4,500円の慰謝料(500円が先に賠償されていたため、実質的に5,000円)

 

■慰謝料が高くなるケースは?

基礎年金番号からは、勤務先の情報なども調べ得ることを考えると、若干高くなる可能性はあると思いますが、現在の裁判実務からするとそれほど高くはならないと思われます。

高めの慰謝料を認めた例としては、氏名、住所、電話番号、年齢、職業といった情報のほか、身体に関する情報が流出したTBC情報漏洩事件(東京地裁平成19年8月28日判決)があり、17,000~30,000円の慰謝料が認められています。

これは、身体に関する情報はプライバシー性が高いからだと評価されています。ちなみに、金額に幅があるのは、迷惑メールを受けていたかどうかを考慮して、金額に差を設けているためです。

このようなものを考えると、今回の事件は5,000~15,000円程度の慰謝料が認められることになるのではないかと思われます。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

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清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

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