障害者施設で虐待が無くならないのは「マスコミ」にも問題がある

介護施設や障害者施設における暴力が後を絶ちません。2015年6月にも山口県にある障害者施設で日常的な暴力が発覚し、ニュースになりました。

このようなニュースが出る度に疑問に思うことは、日常的な暴力を「虐待」と表現するすることです。テレビの映像を見ると、職員が障害者を殴っています。どう見ても暴行罪(刑法208条、2年以下の懲役)です。

病院介護

虐待などとオブラートに包んだ表現をするから、被害の実態が見えにくくなるのだと思います。仮に、障害者が怪我をしたなら、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役)です。

マスコミは、事実を正確に伝えるべきです。そうすれば、このような被害が減ると思われます。

似たような事例として、学校で教師が生徒を殴るのを「体罰」と表現したり、生徒同士の暴行を「いじめ」と表現することもあります。

さらに、強制わいせつ(刑法176条、6月以上10年以下の懲役)を「ちかん」と表現したり、強姦(刑法177条、3年以上の有期懲役)を「婦女暴行」とかたんに「暴行」と表現したりします。被害者が女性の場合にその女性を傷つけないという配慮があるのかも知れませんが、行われた犯罪を正確に表現し伝えるのがマスコミの使命だと思います。

 

●加害者の意見だけで判断するのはおかしい

話を戻しますが、今回の日常的な暴力に関しては、昨年にも内部通報があり、市が調べたそうですが、施設職員が否認したので、暴力はなかったという結論になったそうです。

しかし、犯罪の加害者からの聴取だけで調査を終了するのはおかしいです。被害者にも聞いてみるべきですし、その後も継続した調査が必要です。

また、記事によると、暴力を働いた職員を懲戒解雇するそうですが、それだけだと甘すぎると思います。

刑法犯ですから、警察に告発し、刑事処分も科すようにすべきだと思います。密室で行われる犯罪、特に被害者が自ら被害の申告をしにくいような場合は、監督官庁が厳密に監督すべきだと思います。

 

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

*画像:わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)

星 正秀 ほしまさひで

星法律事務所

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