内と外から見て分かった「法テラス」が抱える問題点とは

■法テラスの内部

法テラスが法律事務所を運営している目的は、過疎地域における弁護士不足の解消や都市部における国選弁護や民事法律扶助を担当する弁護士の充実にあります。

法テラスが設立され、「法テラス法律事務所」が発足したころは、弁護士が一人もいない司法過疎地域は日本全国に少なからず存在していました。また、都市部でも、報酬が安いために、国選弁護や民事法律扶助事件を受任しない弁護士も相当数いたといわれています。そんななかで、これらの業務を専門的に扱う「法テラス法律事務所」が必要だとされていました。

私は、都市部の法テラスで国選弁護や民事法律扶助事件を専門的に担当する仕事をしていました。入ったころは、確かに国選の刑事事件が「人手不足」という理由で回ってくることがよくありました。また、ちょうど「派遣切り」が問題となっていたころで、自治体の「水際作戦」により、生活保護の受給申請を不当に断られるケースなども寄せられていました。

しかし、弁護士の数が増えるにつれ、国選弁護や民事法律扶助の仕事をする弁護士も当然増えてきました。安い費用で破産事件や他の民事事件を受ける法律事務所も、都市部を中心にどんどん増えていきました。無料法律相談をうたう事務所も多くなってきました。

そのうち、国選事件の人手が足りないという事態は減っていきました。予定されていた法律相談がキャンセルになるという事態も出てくるようになりました。私の仕事も減っていきました。

法テラス法律事務所は、原則として給料制です。この給料も、私が勤務弁護士をやっていた当時は、「奴隷のような給料」と酷評されていました(個人的には、そうは思っていませんでしたが)。しかし、職にあぶれる法曹有資格者が少なくないご時世となっては、安定収入が得られる法テラスは人気の就職口のようです。

法テラスの事件は、困難な事件や対応に配慮を要する依頼者の比率も高く、精神的に追い詰められる勤務弁護士も少なからずいます。その一方で、必ずもらえる給料に安住して、ろくに仕事もせずにのほほんとしている勤務弁護士も少なくありません。私も実際そういう勤務弁護士を複数見てきました。

 

■外側から法テラスを見て

国選事件については、かつて出なかった費用が出るようになったり、大昔に比べれば随分と報酬面の問題は解消されているようです。しかし、報酬の算定が形式的なため、弁護士が必死になってつかみ取った成果(早期の釈放など)が正当に評価されず、非難の的となっています。報酬規定の見直しは必至でしょう。

また、民事法律扶助事件については、地域差もあるようですが、法テラスが弁護士費用の立替を決める審査に問題があると考えています。提出が必要な書面が多すぎますし、審査が形式的過ぎるのです。弁護士の助力が必要で、かつ資力が低い人が法テラスの支援を受けられないということもままあるように感じています。

「安かろう悪かろう」が是認されている側面もあり、明らかに問題がある対応をしている弁護士がいても、よほどのことがない限り法テラスとの契約が解除されることもありません。

このように、内から見ても外から見ても、法テラスが問題だらけの組織であることは間違いないと思います。特に最近は、組織全体が、法務省や財務省の顔色ばかりうかがっているといえます。

弁護士や利用者の苦情を解消したり、「やる気のある勤務弁護士」が頑張ることができる体制を作る根本的な動きが見えません。

自分がいた組織の悪口を言うことには、多少の心苦しさを覚えます。が、今回は、あえてたくさん毒を吐きました。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)

寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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