最近は働き方改革の影響で、サービス業でも年末年始やゴールデンウィークなど長期連休に営業しない企業が増えているといわれます。
しかし、コンビニエンスストアや一部スーパーマーケット、商業施設など24時間365日営業を謳い文句にしている店舗もまだまだ存在し、連休中に休めないという人も多いようです。
パートタイマーに不満を募らす店長
温浴施設で店長をしているYさん(50代・男性)もその1人。大学卒業後すぐに温浴業界に就職したため、一般的な連休に休暇をとったことはほとんどないそう。
そして昨今は人手不足もあって、人員確保に頭を悩ませているといいます。2019年から20年にかけての年末年始もパートに頭を下げて回り、なんとか出勤人数を確保。もちろん自分も休みなく出勤で、なんとか店を運営することができたと話します。
そんななか、店長が不満を募らせているのが、1人の女性パートタイマー。仕事はできるのですが、長期連休は必ずすべて休み、「一日だけでもいいから出てくれないか」と出勤のお願いをしても、「海外旅行に行きたいから」と応じてくれません。
他の社員のなかには「あの人はずっと出ているから、自分も全て休みたい」と話すパートも出ており、店舗運営に悪影響を与えていると感じています。Mさんはできれば辞めてもらいたいと考えています。
少々無理があるようにも思えてしまうのですが、実際のところ、長期連休に必ず休み、お願いを聞いてくれないパートタイマーを辞めさせることはできるのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問してみました。
弁護士の見解は…
冨本弁護士:「シフトに非協力的という理由だけでいきなり解雇をすると、解雇権の濫用と判断される可能性があり、難しいと考えます。デパートなど年末年始・ゴールデンウィークの繁忙が当たり前のような業種であり、そのことを前提に採用時に年末年始勤務・ゴールデンウィーク勤務を労働条件して採用したにもかかわらず、たいした理由もなくシフトを拒否され、シフトへの拒否によって会社の業務に著しい支障が生じているような場合であれば、解雇が有効となる可能性もあるのではと考えます」
基本的には難しいようですが、契約条件によっては有効となる場合もあるようですね。
正社員の場合は?
パートではなく、正社員が出勤を断り続けた場合はどうなのでしょうか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問すると…。
冨本弁護士:「正社員の場合にも、シフトに非協力的という理由だけでいきなり解雇すると、解雇権の濫用と判断される可能性があると考えます。正社員の場合、長期雇用を前提に採用されていますので、パートタイマーよりもさらに解雇が難しいのではと考えます」
出勤に応じないだけで解雇するのは原則無理
Mさんもかなり厳しい状況に置かれているようですが、「長期連休に出勤しないからクビ」という措置は、基本的には解雇権の濫用となるようです。辞めさせるよりも、出るよう説得するほうが良さそうですね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)