6月、静岡市葵区の路上でバイクの運転者を死亡させたとして、歩行していた男(41)が重過失致死罪で書類送検されました。
歩行者は赤信号にもかかわらず横断歩道を歩き、青信号で走行してきたバイクと衝突。運転者は死亡し、男も重傷を負いました。事故原因は当時酒に酔っていた男の行動であることから、書類送検に踏み切ったようです。
なおバイクの運転者についても容疑者死亡のまま自動車運転処罰法違反で書類送検されています。
歩行者が書類送検されるのは珍しい
非常に不幸な事故の原因は、酒によって赤信号にもかかわらず横断歩道を渡っていた歩行者の行動に他なりません。しかし、今回のように交通弱者である歩行者が重過失致死に問われることは珍しい気がします。
なぜ今回このような措置が取られたのでしょうか? 法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いてみました。
なぜ認められた?
冨本弁護士:「 歩行者が信号を無視していたり、横断が禁止されているにもかかわらず横断したとか、歩行者に法律違反が認められるからでしょう。
運転者よりもむしろ歩行者の方に重大な法律違反があり、その結果、人が死傷するような事態が生じていれば、たとえ歩行者といえども送検されて当然ではと考えます」
誰が判断する?
歩行者に重大な法律違反があった場合は交通弱者であっても書類送検されることがわかりました。そうなると、誰がどのように法律違反の有無を判断するのか気になります。法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いてみました。
冨本弁護士:「送検は、検察官送致のことですが、警察官が事件を検察官に送ることです。送検を判断するのは警察官ですが、警察官が事件の捜査を行った場合、送検するのが原則となっています。
検察官は、送検された事件を、裁判所に起訴して処罰を求めるかどうか判断します」
運転者が指摘することはできる?
静岡市葵区で発生した歩行者を起因とした事故は、これからも全国各地で発生する可能性がありますが、実際のところ、今回のように交通弱者が送検されることは極めて珍しいようです。
仮に自分が運転者で、歩行者の信号無視など無法行為によって事故が発生してしまった場合、自ら歩行者の責任を指摘することは実際のところ可能なのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いてみると…
冨本弁護士:「ドライブレコーダーの動画や目撃者の証言から歩行者の責任が明らかであるならば、運転者の方で歩行者の責任を指摘して告発することは可能かと考えます。
告発は、犯人や告訴権者以外の者が捜査機関に、犯人の犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める手続です」
証拠をしっかりと押さえ、歩行者の責任が明確になっていれば告発することもできるとのこと。自分の身を守る意味でも、ドライブレコーダーを設置したほうがいいかもしれませんね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)