「金は天下の回り物」ということわざがあるように、紙幣や硬貨は人の手から手へと流通していくものです。当然、手垢などもつくわけで、「清潔ではないもの」と考える人も多いようです。
綺麗好きな人になると、硬貨を磨いて美しく保とうとする人もいるのだとか。ところが、この行為が犯罪になる可能性があると聞きます。
Sさんもその1人で、できれば硬貨を綺麗に磨いて財布に入れたいと考えています。
硬貨を磨くと犯罪になる?
犯罪者にはなりたくないというSさんは、周りの人に質問してみます。Nさんに聞くと、硬貨を綺麗に磨くことは、「変造をしているとみなされる」という答えが帰ってきました。ヤスリで削るなどすれば当然形状が変わることも予想されるためで、「やらないほうが絶対にいい」というのです。
しかし、Fさんに聞くと、「磨いたくらいで罪になるわけがない」と異なる回答がありました。Sさんは一体どちらなのかわからず、困り果てているそう。
実際のところ、どうなのでしょうか? 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士にうかがいました!
弁護士に聞いてみると…
齋藤弁護士:「刑法は、通貨偽造、変造罪について定めています。実はこれ以外にも、特別法といって、
刑法だけではなく、貨幣損傷等取締法という法律が存在します。
· 第1項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
· 第2項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
· 第3項 第1項又は前項の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
貨幣損傷等取締法
このように禁止事項を列挙したうえで、懲役または罰金が定められています。各貨幣の原料を、他のものより価値の高い貨幣にされてしまうことを防止するという狙いがありましょう。そうすると、新品のような綺麗な硬貨を流通させていくことには何ら違法性はありません」
綺麗にするだけなら違法性なし
齋藤弁護士によると、紙幣損傷取締法というものがあり、損傷させる・鋳つぶすなどした場合は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金となるようです。しかし、新品のように「綺麗にする」分には、違法にならないとのこと。
最近はキャッシュレス化が進み、硬貨や紙幣を持たない人が増えていますが、それでもまだまだ硬貨や紙幣の流通量は落ちていません。当然、手にする人は多く、現代でも人の手から手へと回っているのが現状です。
Sさんのように「硬貨を綺麗にしたい」と考えた場合は、損傷や鋳つぶさないことを意識したうえで綺麗にしましょう。
*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)