賃貸物件に住むOさん(20代・女性)は、高齢女性大家のある行動に戸惑いを覚えています。自身が管理する物件であることをいいことに、合鍵を使って入ってくるためです。
女性同士ということもあるうえ、「リンゴのおすそ分け」や「契約更新の話」など、こちらに有利に取り計らってくれることも多いのですが、やはり気分がよくないもの。やんわり止めるよう言っても聞いてもらえず、頭を悩ませる毎日を送っています。
このように大家が自己の持ち物として、借り主の部屋に入ってくることは法律上許されるのでしょうか? 不法侵入罪のような気もしますが…。
銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士に見解をうかがいました。
Q.大家が借り主の部屋に合鍵を使って入ってくる。これは不法侵入罪ではありませんか?
A.不法侵入罪になる可能性があります
「不法侵入罪に該当しえます。ただし、正当な理由があれば別です。
少なくとも賃貸物件は、賃貸借契約を締結し、居住を開始した時点で、独立した区画に対して一定のプライバシーですとか、居住権といった形で正当に保護されるべき利益が発生しています。
そのため、これはいくら大家さんとはいえ、一方的に破ることは許されないのです。
ただし、契約内容や、緊急状態など、合理的理由に基づいて侵入した場合については別です。
施設管理権を有している以上、正当な目的による侵入である場合には、違法性阻却が認められているからです。
この、正当な目的による侵入なのかが、刑法130条における住居侵入罪の成否に重要なカギとなってくるでしょう。
また、住居侵入罪の成否とは別で、慰謝料の支払い義務を負う場合はありえるでしょう」
大家といえども賃貸借契約を締結した瞬間から、居住権など保護されるべき利益が発生しており、それを破ることは許されないのですね。
今回の場合、大家に悪気がなさそうなのがなんとも強気に出づらい部分なのでしょう。とはいえ、せっかくお金をかけて借りている部屋でリラックスできないのも、ストレスがたまってしまいますよね。
契約期間があと少しなら、引越しを検討するのが一番かもしれませんが、更新の時期まで耐えられないと悩んでいる場合は、不法侵入罪を主張していくという手段もあると言えそうです。
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*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)