芸能事務所などでは、所属タレントにダイエットを命令することがあります、モデルなどは容姿を売りにしているだけに、体型の崩れは死活問題。そう考えると、当然のことかもしれません。
しかし、体型は個人的なことであり、第三者に指示されることではないような気もします。また昨今は一般企業でも社員の健康維持などの観点から「痩せろ」と指導することがあると聞きます。
社員の体型について会社が指導を与えることは法的に問題ないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。
■芸能事務所の場合は?
まず、モデルなど、芸能事務所の場合はどうでしょうか?
冨本弁護士:「モデルなどの芸能事務所の場合、業務命令として許されるのではと考えます。労働者は、労働契約により使用者の業務命令に従う義務があります。業務命令も無制約に許されるわけではありませんが、労働契約の予定する範囲内であれば許されます。
労働者(タレント)がそのルックスで採用されている場合、使用者が労働者にルックス維持に必要な最低限の指示を行うことは労働契約の予定する範囲内だと考えます。」
■一般企業の場合は?
次に一般企業の場合はどうでしょうか?
冨本弁護士:「一般企業の場合、社員の健康管理のためとはいえ『食事制限』までは労働契約の予定する範囲内とはいえないのではと考えます。
ただし、社員の健康管理のため業務命令で「健康診断の受診」を命じることはでき、受診を拒否した労働者に対するペナルティが有効となる場合はあります(最高裁昭和61年3月13日判決)。」
モデルなどルックスのよさを前提に採用している場合は、業務命令としてダイエットを指示することも可能となるようです。しかし、一般企業の場合は許されない可能性が高いとのこと。
健康維持の観点から見れば病気のリスクが高い肥満は改善したほうがよいとは思いますが、会社がそれを指示することは基本的にはできないということなのですね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
*画像はイメージです(pixta)