ある若手野球選手が、監督から海外旅行を禁じる指令を出されたことが話題となりました。これは今シーズンその選手が自主トレシーズンに出国先で故障などをしためで、それを防止する狙いがあるといわれています。
拘束力があるか否かは不明ですが、言われた側としては面白くないでしょう。
■会社から「海外旅行禁止令」がでることも
このようなことは一般社会でもあるようです。会社員のSさんもその1人で、上司から「会社の携帯電話をONにしたうえで、いつでも連絡し会社に出勤できるよう海外には行くな」などと命令され、海外旅行を制限されたことがあるそうです。
当然Sさんは不満に思ったのですが、収入を失うことが怖く、同意せざるを得なかったといいます。このような措置は、法的に許されるのでしょうか?
ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。
■「海外旅行禁止令」は許されるのか?
「勤務時間以外を拘束するわけですから、雇用関係においては原則、違法ということになると思います。具体的には、その規制の合理性・必要性、そのほかの方法があるか否か、労働者側の承諾が真意に基づくか否かが問われるでしょう。
ちなみに、プロ野球選手も雇用契約説が多数学説なので、同じでしょう。法的拘束のある話ではないと思います」(森川弁護士)
勤務時間外の過ごし方を拘束するということですから、「原則違法」ということになります。したがって、拘束力も原則ないとのこと。
ただし、労働者側の承諾や合理性・必要性に基づいている場合は認められることもあるそうです。プロ野球選手のケースは、監督が期待しているからこその発言で、特殊な世界であることから、許される部分もあるのでしょう。
しかし、一般企業の場合、勤務時間外のことまで細かく指示を与えることは、個人の自由を制限するわけですから、やはり問題と言わざるを得ません。
多くの場合は「会社の言うことだし……」とSさんのように諦めてしまうでしょう。しかし、そのようなことは本来おかしな話。どうしても納得がいかない場合は、弁護士とともに訴えてみるのも、1つの手ではないでしょうか。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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