パーマの失敗で結婚式が台無しになったとして、高松市の女性が美容室経営者に対し約490万円の損害賠償を求め地裁に提訴しました。
結婚式でお色直しの計画を直前に変えざるを得なかったとし、「一生に一度の晴れ舞台を楽しみにしていたのに、台無しになった」と、慰謝料220万円と元の長さになるまでのヘアケア代約230万円の支払いを求めているそうです。
被告は「まったく責任がなかったとは思わないが、どこまで責任を負うべきか、裁判ではっきりさせたい」と述べていますが、今回は弁護士の私が、被告にどこまでの過失責任があるのか検証してみたいと思います。
まず、このパーマが自身の結婚式のための特別なものだった、ということであり、かねてから楽しみにしていたことはよく理解できるところです。
■定期行為とは?
おそらく、結婚式のために特別な髪型を作ろうと、美容師の方とも念入りに打ち合わせをしながら、この日を迎えたのだと思います。要は、結婚式仕様です。この日にできなければ意味のない髪型なのです。こういうものを「定期行為」と言います。
その意味では、通常の契約のように、多少履行期が遅れたからといって許せる範囲の物とは違ってきます。本当に美容室の過失によるものであるとすれば、その責任は大きく、通常の場合以上に慰謝料請求もされるものと思います。
本件では、訴状によると「女性は昨年1~7月、3回にわたりこの美容室でデジタルパーマやストレートパーマを受けたが、たわし状の縮れ毛が出るなど、毛先から25センチ以上がチリチリの状態になり、15センチ分、髪を切るしかない状況になった」とされているそうです。
約半年間、3回にわたり、女性はこの美容室に通っており、おそらく結婚式のための髪型についても、打ち合わせをしていたものと思います。髪質等をチェックした上でパーマをかけたはずが失敗したということになると、美容室のプロとしての注意義務の不足は、認められてしかるべきかと思います。
■6年間のヘアケア代は妥当か?
では、損害として元の長さになるまでに、6年間のトリートメント料、ヘッドスパ代、カラーリング料が必要かどうかについては、慎重な検討が必要でしょうし、おそらくそこまでの因果関係を証明するのは難しいのではないかと思います。
15センチ分髪を切ることによって見た目の醜状は直ったものと思われますので、当面(半年分くらい)のヘアケア代程度が認められるに過ぎないのではないかと思います。
メインは、やはり慰謝料の方だろうと思います。通常、債務不履行による損害賠償として慰謝料が認められるのは稀であることを考えると、50万円前後、和解で解決できたとしてマックスでも100万円程度ではないかと思われます。
あまり判決にはなじまない案件だと思います。美容室側がどのような和解案を出すのかが、とっても見物な事件だと思います。