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9月21日、野菜を1円で販売していた愛知県のスーパー2店に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反にあたるとして、運営会社に対し再発を防止するよう警告しました。
これは1円で販売されることにより、ほかのスーパーや八百屋の販売業務を困難にしかねないためだそうで、1円にすることによって通常より数倍の売上があったそうです。
独占を禁止するという論理は理解できますが、別にいくらで販売しようと店舗の自由ではないのでしょうか?
星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に、今回の問題について見解を伺いました。
「先日、愛知県のスーパーで野菜を1円で販売した事業者が独占禁止法違反の疑いで警告を受けたとの報道に接しました。
警告の理由は1円で野菜を廉価販売したことが“他者の事業活動を不当に妨げる可能性がある”とのことですが、野菜に限らず、よく広告などで目玉商品がきわめて安い価格で販売されていることを目にする機会があると思います。
そこで、今回は、どのような態様で商品を安く販売すると“他者の事業活動を不当に妨げる可能性がある”とされてしまうのかについて解説したいと思います」(木川弁護士)
■一時的なセールや季節限定商品などは独占禁止法違反とはならないことが多い
「独占禁止法は、不公正な取引を規制する法律であり、その一態様として事業者による不当廉売を禁止しています。
何が不当廉売にあたるかについては公正取引委員会が「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」というガイドラインを出しており、同ガイドラインでは(1)廉売の態様(価格・費用及び継続性)、(2)「他者の事業活動を困難にさせるおそれ」、(3)正当な理由の有無の3つから不当廉売に当たるか否かを判断すると定められています。
具体的な例でいうと、仕入れや製造原価割れで商品を販売することは他の事業者が同じ価格で販売して競争に参入することを妨げてしまうので、原則として不当廉売となり得ます。
しかし、たとえば、開店セールでお客さんを集めるために、ある特定の商品だけを数量限定できわめて安い価格で販売しても、それは一時的なもので他の事業者の参入を妨げることにはなりませんから、上記の(1)や(2)の要件を充たさず、不当廉売には当たらないとされています。
また、生鮮食料品は時間が経てばその品質が急速に低下しますし、クリスマスケーキのような季節限定商品は需要の最盛期を過ぎると売れなくなってしまいます。
このように、見切り販売をする必要がある場合は正当な理由があるとして上記(3)の要件を充たさず、やはり不当廉売に当たりません」(木川弁護士)
■今回のケースの問題点
「今回の1円野菜のケースは、2つの店舗が互いに競争するために継続的に行っていたものですので、周辺の他のスーパーや八百屋さんの販売を困難にさせかねないとして警告がなされたものです。日にちと数量限定で野菜を1円で売っていたとしたら、セールの頻度にもよりますが警告がされなかったといえます。
なお、野菜の安売りに関する不当廉売の疑いでの警告は全国初のようですが、最近では卸売業者がビールを原価割れで小売店に納入していたことが不当廉売の疑いがあるとして警告がされたケースがあります。
2つの店舗はもしかしたら不当廉売規制の存在を知らなかったのかもしれませんが、警告によるレピュテーションリスクや地域内の他の事業者とのあつれきが生じてしまいますので、セールを行うときは独占禁止法違反とならないよう十分注意したいところです」(木川弁護士)
今回に限らず、「安売りセール」にはつねに「独占禁止法違反」の可能性が潜んでいるのですね。
*取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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