尿意や便意は人間の生理現象。「我慢しろ」と言われても、なかなかできるものではありません。コンビニエンスストアのトイレがあって助かった経験がある人も多いのではないでしょうか。
そんなコンビニのトイレですが「使用する際は一声かけてください」と張り紙がしてある場合があります。店側としてはみだりにトイレを使用されることや、商品の万引き防止などからそのような措置を取っているのだろうと考えられます。
■トイレを借りる場合は一声かけるものだが……
「一声かけて」という張り紙がある場合、当然ながらコンビニのトイレを借りる場合は店員に「トイレを貸してください」と店員に声をかけていることと思います。
しかし、「面倒くさい」と思うのも事実です。デパートなどでは勝手に使っても良いわけですから、「何も言わなくてもいいじゃないか」とも思ってしまいます。
仮に声をかけずにコンビニのトイレを借りた場合どうなるのでしょうか? 無断で敷地内に侵入したわけですから、建造物侵入罪に問われるような気もしますが、コンビニのトイレくらいでそれはないようにも思えます。
一体真相はどうなっているのでしょうか? 星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお伺いしました。
■コンビニのトイレを借りるとき声をかけないとどうなる?
「刑法上、他人が看守する建造物への侵入行為は建造物侵入罪とされています。他人が看守する建造物への侵入とは、管理権者の意思に反する立ち入りを意味します。
例えば、窃盗目的、営業時間外の立ち入りなどは、明らかに管理権者であるコンビニ店長が予定しない立ち入りであり、建造物侵入となります。
他方、デパートや駅構内、スーパー、コンビニなど公衆の出入りが自由とされている場所は、基本的に最終的に買い物をしなかったとしても、立ち入りが管理権者の意思に反するとはいえません。
そうすると、トイレ目的でのコンビニ利用が建造物侵入となるのは、
(1)コンビニ入口にトイレ利用だけの目的での入店を明確に拒否する表示があり、かつ、(2)利用者が明確にトイレ利用目的だけであったと評価できる場合に限られるでしょう。
しかし、最終的にコンビニで買い物をしない限り、コンビニ店長の意思に反する立ち入りということはできませんから、結局、(2)利用者が明確にトイレ利用目的だけであったとの要件を立証するのは極めて難しいのではないかと思います。
したがって、実際にはトイレ利用だけであったとしても、建造物侵入で刑事罰を科されることは想定しにくいと思います。
マナーの問題として、「従業員に一声かけるべき」なのはいうまでもありません」(星野弁護士)
従業員に一声かけることはマナーとしては当然のことですが、仮にかけなかったとしても建造物侵入罪となる可能性は低いようです。
*取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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