企業ではセクハラなど会社に重大な損失を与える行為をした、犯罪をした社員に対し、懲戒処分を前提とした「自宅待機命令」を出すことがあります。
会社は当該社員を自宅で待機させた上で、事実関係の調査や処遇の考慮などを行うことが一般的。懲戒処分相当の行為をしたことが事実であることが確認できた場合は、相応の処分が下されることになります。
■賃金はもらいたいところ……
労働者側としては懲戒処分相当の行為をしてしまった場合は、会社の決定に従わざるを得ません。「クビ」といわれて辞めさせられることもあるでしょう。
しかし、自宅待機命令については、会社が「来るな」と言っているわけですから、労働者側としては、待機中の賃金を支払ってもらいたいところ。会社側としてはもちろん、支払いたくはありません。
セクハラなどの重大行為で懲戒処分を検討している社員に対して自宅待機命令を出した際、企業は賃金を支払う必要があるのか。社員は賃金をもらうことができるのか。
法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。
■自宅待機命令期間中賃金はもらえる?
「セクハラが事実で懲戒処分が相当であれば、自宅待機中の賃金は貰えないのが普通です。懲戒処分とは、企業が秩序を維持するために従業員の規律違反・秩序違反に対して行う制裁のことです。
セクハラは企業秩序を乱す職場規律違反と考えられますから、就業規則で「職場規律違反」を懲戒事由、「出勤停止」を懲戒の手段の一つと定めていたのであれば、セクハラを理由として自宅待機命令を下すことができます。
この場合、セクハラを行った従業員は、会社から自宅待機を命じられたことで労務を提供できないわけですが、職場規律に違反し自業自得ですのでその間の賃金請求はできない、働いていない以上もらえない、ということになります。
ただし、懲戒処分は相当なものでなければならず、懲戒事由と比較して不相当に重い処分は無効ですので、セクハラの内容からして不当に長い自宅待機の場合、相当な自宅待機期間を超える期間の分の賃金は請求できると考えます」(冨本弁護士)
従業員の犯した行為や就業規則などが、考慮ポイントになるようです。素人には判断のつきにくい事案ですので、弁護士に相談するのがベストかもしれませんね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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