若い頃は容姿が優れていたのに、中年になったらすっかり別人になってしまったということは、多々発生する現象です。
男女ともその要因にあがるのが、体型の変化ではないでしょうか。身体や顔に肉がつくことにより、形が変わってしまうことで、「ぜんぜん違う」人間に変貌してしまいます。
人は中年になると代謝が落ちるだけに、どうしても体重が増えてしまうもの。それを防ぐには、節制するしかありませんが、なかなか難しいのが実情でしょう。
そのようなことを抑止する意味で、結婚時に「太ったら離婚」と約束したうえで一緒になることがあるそうです。守ることができればいいのですが、なかなかそうもいかないのが現状。
仮にその合意を反故にし、太ってしまった場合、この約束は有効なものとなるのでしょうか?
エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。
■「太ったら離婚」は有効?
「太ったら離婚する」というのは、いわゆる「結婚契約(婚前契約)」であると解されますが、基本的に契約は合意に基づいている以上、当事者間での合意は原則として有効です。
ただし、違法な内容であったり、社会的に妥当性を欠くような内容であったりする場合には、公序良俗(民法90条)に反するものとして無効となります。
今回のように「太ったら離婚する」という内容自体が社会的に妥当性を欠くとまでいえるのかはなかなか難しいところですし、「太ったら」の意味が広すぎて、そもそも「太った」「太ってない」と水掛け論が展開されて、結婚契約の条項としての意味を持たない可能性もあります。
そのため、仮に結婚前に「太ったら離婚」という合意をするのであるならば、例えば「〇キロ以上太ったら」とか、「ウェストが〇センチ以上になったら」など、客観的な基準を入れておくと、条項としての機能を持つ可能性も出てきます。
とはいえ、このような個人の意思が尊重されるべき内容に関しては強制することはできないうえ、法律上の離婚原因である民法770条1項各号にも該当するともいえなさそうです。
ということは、結果的にこの条項を理由に離婚をすることは事実上難しく、条項違反があったときにそれを離婚事由とするという意味での有効性は否定されそうです。
この条項に限らず、結婚契約をする場合には、口約束だと実際に争いが起きた際には言った言わないの水掛け論となりかねないので、何か約束事をしたときには、書面化しておきましょう。
この記事を読んで「太っても離婚しなくてもいいんだ!」と思った方もいるかもしれませんが、いつまでも出会った当時の素敵なパートナーでいてほしいと思うのは配偶者として当然の思い。
法では心は縛れませんし、心にも身体にも贅肉がついていては、夫婦関係も冷えてしまうかもしれません。自身の健康のためにも適度な運動を心がけましょうね」(大達弁護士)
なるべくなら、結婚時に交わした「約束」は守りたいものですね。
*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
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