自民党のある議員が、既婚者でありながら、愛人と結婚式を挙げていたことが判明。しかも本妻は癌で闘病中だったうえ、この愛人とは別の女性議員とも交際していたといわれています。
かつては大名などを中心に妻(正室)以外の女性を妻(側室)とすることが認められていましたが、現行法ではこの「重婚」は、日本では禁止されており、犯罪になります。
重婚は犯罪ということは理解している人が多いと思いますが、実際にどのような場合に法律に反するのかご存じない人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は重婚の罪について、解説していきます。
■刑法・民法それぞれに抵触
民法に以下のような条文があります。
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。(民法732条)
一夫多妻制を導入している国もありますが、日本では民法によって重ねて婚姻をすることは違法と定められています。
そして、刑法でも
配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。(刑法184条)
との条文があり、重婚をした場合は罪に問われることになります。
ただし、ここにいう「婚姻」とは、婚姻届を提出した正式な結婚(「法律婚」といいます。)のことです。内縁や事実婚は含まれません。結納をした、結婚式を挙げた、同棲した、という場合も「重婚」にはなりません。
なので、既婚者が配偶者以外の人と内縁関係・事実婚の関係になったとしても、「重婚」にはなりません。
「重婚」になる場合は極めて限定的です。既婚者が離婚届を偽造して提出し、法律上の離婚を成立させた上で別の人と婚姻届を提出したという場合に重婚罪で処罰した裁判例があります。
したがって某議員は、疑惑が事実であっても、重婚罪に問われることはありません。
ただし、不貞行為の場合と同じように、損害賠償責任(民法709条)が発生する可能性はあります。
重婚的な行為は、処罰されないとしても、今回のように離党を余儀なくされるなどして、社会的地位も失うことになります。既婚者でありながらほかの異性と交際とするということは、現在の世の中ではモラル的に「ありえない」行為といえます。
*記事監修弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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