いくつかの案があるようで、決定はしていないようですが、2027年に品川-名古屋間、2045年に品川-大阪間で、リニアモーターカーの開通が予定されています。
開通がなされれば便利な世の中にはなりますが、そうすると、 当然路線付近の住民に対して立ち退きの要求がなされることが予想されます。大規模な立ち退きとなるとトラブルがつきものです。
そこで、今回は法律的な観点から立ち退きについて解説をしていきたいと思います。
■立ち退きに関する法規制
借地借家法という法律では借り主(借地権者といいます。)は強く保護されています。
借り主が契約期間の満了前に契約を更新する意思を大家(借地権設定者といいます。)に伝えた場合には、原則として自動的に契約が更新されます。
大家さんが契約の更新を拒絶できるのは、正当な理由がある場合に限られます。
そして、正当な理由があるといえるかどうかについては、大家さんが土地の使用を必要とする理由や、立ち退き料の支払いの申し出がある場合には、その申し出を考慮して判断されることになります。
つまり、土地使用の必要性がどれだけ高いかということと立ち退き料の申し出の有無、金額等が総合的に考慮されて、大家さんの立ち退き要求が正当かどうか判断されることになるのです。
■支払われるはずの立ち退き料が突然支払われなくなったら?
例えば、かりに100万円の立ち退き料の支払いを受けることによって立ち退きを承諾したにもかかわらず、大家さんが後日その支払いをしないと言い出した場合、立ち退きを拒絶できるでしょうか。
大家さんの支払い拒絶は、立ち退きに関する合意に違反する行為です。ですので、借り主としては、これを理由に合意自体を解除して、立ち退きを拒絶することが可能です。
このように大切な合意であっても、実際には書面が作成されないことも少なくありません。
そうすると、トラブルが生じた時に、実際に立ち退き料の合意があったかどうかうやむやにされ、立ち退き料が当初の金額よりも減額されたり、強硬に立ち退き料なしでの立ち退きを迫られることもあり得ます。
手書きでも結構ですので、合意書を作成し、大家さんの署名押印をもらっておくことが重要です。
*著者:弁護士 寺林智栄
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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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