3月27日、格安海外旅行業者の(株)てるみくらぶが東京地裁に破産を申請し、同日破産開始決定を受けました。代理人弁護士らによると、負債額は計150億円にもおよぶとのこと。
報道によると、今回のトラブルで影響を受けるのは合わせて3万6,000件、人数にしておよそ8万人から9万人で代金の総額は99億円余りに上るようです。
また、観光庁は、26日の時点で、てるみくらぶの客約2,500人が38の国と地域に滞在しているとのことです。ちょっと考えただけであらゆるところに大きな影響が出そうですね。
記憶の限りこの規模の旅行会社の倒産事例はあまり例がありませんが、こういった場合、旅行者や顧客はどのように対応すればよいか、金銭的な補償の有無などについてご説明いたします。
■通常、旅行会社は旅行業協会に加入している
ほとんどの旅行会社は、旅行業協会に加入しています。日本国内には、日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)という旅行会社などが加盟する2つの組織があり、てるみくらぶも前者に加入しているようです。
こういった旅行業協会には弁済業務保証金制度というものがあり、一定の弁済を受けられます。ただし、これは、「旅行業務に関する取引によって生じた債権」に限られます。
例えば、今回のケースでいえば、旅行に行く予定で支払った金銭などはこれにあたります。しかし、この制度を利用しても上限があり、てるみくらぶの場合は1億2,000万円に設定されているそうです。
上記のとおり、100億円近い代金が支払われているとすれば、弁済を受けられるのはわずか1%そこそこということになります。仮に20万円の旅行代金を支払っていた人がいた場合、返ってくるのはわずか2,000円ほどということになります。
もちろん、何もしなくてもお金が返ってくるというわけではなく、それなりに煩わしい手続きが必要です。実際に全員が手続きされることは無いのではないかと思われます。
■カード決済していた場合は損害回避できる場合も
旅行代金をカード決済していた場合、カード会社に問い合わせて支払いを止めるよう伝えることにより、損害を回避できる可能性があります。早めにカード会社にお問い合わせください。
これだけのニュースになっているので、カード会社も対応は比較的スムーズなのではないかと思われます。
あとの弁償に関しては、破産手続き上での配当ということになります。ですが、旅行代金は破産手続き上、一般破産債権となりますので、優先的に支払いがなされる債権に劣後します。配当はほとんど無いと覚悟された方がよさそうです。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)
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