3月12日から26日まで行われた大相撲3月場所。注目を浴びていた優勝争いは、千秋楽にまでもつれ込み、新横綱の稀勢の里が2場所連続2回目の優勝を果たしました。
今場所では、稀勢の里は、安定した取り口で勝利を重ねる一方、これまで盤石の強さをみせてきた白鵬が5日目に休場。17年ぶりの4横綱による優勝争いに注目していたファンにとっては、少々残念な場所になりました。
横綱は相撲界でトップの立場にあり、つねに勝利を義務づけられた存在。
仮に格下相手に負けると、会場に座布団が舞うことになります。場内アナウンスでは「座布団を投げないてください」と呼びかけ、館内の禁止事項にも明記されているのですが、金星が発生すると、必ずその光景を目にします。
マス席の座布団は意外と重く、舞った物が当たると痛いもの。仮に当たりどころが悪く、怪我をしてしまったら、投げた人間に治療費や損害賠償を請求したくなりますね。
実際のところ、そのようなことは可能なのでしょうか?
Q.大相撲の会場に舞う座布団に当たって怪我をした場合、損害賠償を請求できる?
A.できます。
投げた座布団が人に当たれば怪我をさせてしまうことも予見可能ですから、座布団で怪我をした人は投げた人に対して治療費等の損害賠償を請求できるものと思われます。
刑事上も座布団を投げて人に怪我をさせると傷害罪や過失傷害罪に該当する可能性があります。また、安全対策が十分でなかったのであれば、主催者や管理者に損害賠償を請求することも考えられます。
現実問題として投げ込まれた座布団から投げた人物を特定することは難しいわけですから、仮に上記のようなことが発生すれば主催者である相撲協会に損害賠償を請求せざるを得ません。
場内アナウンス等による注意でも座布団の舞がなくならないことからすると、法的リスクという意味でも、相撲協会はより効果的な安全対策を講じる必要があるように思います。
なお、「座布団の舞」は、名物となっていることや、プロ野球の硬式ボールのように当たって失明や骨折など重大な怪我に繋がることが少なそうなこともあって、これを許容する相撲ファンの意見もあるようです。
しかし、座布団投げは、当たれば人を怪我させる危険があり、本来は禁止されている行為で、怪我をさせれば法的にも損害賠償の義務を負います。それだけは忘れないようにしてください。
*記事監修弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*Yuka Tokano / Shutterstock
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