「有給休暇を利用しよう!」と思っても、会社によって有給休暇の申請に関するルールは様々です。当日の病欠も有給休暇として処理してくれる会社もあれば、1週間前の申請がない限り一切申請を認めないという会社もあります。
では、もしも有給休暇の申請を「1ヶ月前」とルール化している会社があったとしたら、従業員はこれに従わなければならないのでしょうか?
Q.有給休暇の申請は1ヶ月前までに……そんなの違法では?
A.事前申請が認められるのはせいぜい3日〜1週間前くらいまでであり、合理的な理由もないのに1ヶ月前の申請を強制するのは無効と判断される可能性が大です。
まず大前提として押さえておいていただきたいのは、有給休暇は労働者の権利であり、この権利を使うことを会社は拒否することは絶対にできないということです。
とはいえ、会社も代わりの人材を確保する必要があるなど、急に休まれては困るという事情があるため、有給休暇の利用時期を別日に変えてもらう権利(時季変更権と言います)や、就業規則によって「申請は○日前までに行うこと」などと定める権利が認められています。
とはいえ、会社には従業員がスムーズに有給休暇を利用できるように配慮する義務を負っているため、どうしても1ヶ月前に申請してもらわないと業務が全く回らなくなってしまう、というような合理的な理由がない限り、有給休暇の申請を1ヶ月前とするのは無効になると考えられます(有給休暇の取得をしにくくしているとしか考えられません)。
特殊な事情のない限り、事前申請を義務付けるとしても、認められるのは過去の裁判例を参考にしても3日〜1週間前までが妥当であるといえます。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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