11月9日、中国のネットメディア「今日頭条」において、日本でパトカーや消防車などの緊急車両が出動している動画記事が報じられました。一般のドライバーたちが自発的に停車し、道を譲っている様子も紹介されており、「中国とは違いすぎる」と伝えられていました。驚きの理由として、中国では権力を誇示するために“緊急ではない”ときでもサイレンを鳴らしているから、といったコメントが見られました。
そんな中国からすると緊急車両に対する認識が異なる日本ですが、パトカーや消防車だけではなく、ガス会社の車両や赤十字社といった車両も、赤信号で走行していたり、法定速度よりも早い速度で走行しているところを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
このように日本では、民間、公共の車両を問わず意外にも多くの車両が緊急車両として認められているようですが、どのような車両が、どのような理由でどのような場合に緊急走行ができるのでしょうか? また、緊急走行している時に制限速度はあるのでしょうか?
■どのような車両が緊急走行できる?
道交法では、追い越しや、赤信号の停止義務が定められていますが、例外として、緊急自動車は、赤信号を通過できたり、速度制限が緩和されたりしています(道交法39条、41条、道交法施行令13条)。
緊急走行できる緊急自動車には、公安委員会の指定が必要であり、警察車両や消防車・救急車の他、電力会社やガス会社、鉄道会社、レッカー車、病院のドクターカー、赤十字血液センターの輸血用血液搬送車なども、指定を受ければ緊急自動車として緊急走行が可能です。
■緊急走行でできること
状況に応じて道路右側にはみ出して追い越しや逆走ができ、赤信号などで一般車両が停止しなければならない状況でも、停止せずに通過できます。
シートベルトの着用義務も免除です。
速度制限も緩和されており、一般道は80km/h、高速では100km/hまで可能で、さらに交通違反取締時は、違反車両と同等の速度で走行できます。
このように、緊急車両は速度制限が緩和されていますが、無制限ではなく、過去にはパトカーが速度超過で処分を受けた実例もあります。
■緊急走行時の遵守事項
赤色灯・サイレンの使用の他、赤信号や一時停止標識の前では、徐行安全確認義務が課せられています。
緊急車両といえば、通常は、パトカーや救急車を思い浮かべますが、道交法上は、それ以外でも指定を受ければ、緊急走行が可能となっています。
もちろん、全ての車両が緊急車両としての指定を受けられるわけではありませんが、意外と多くの緊急車両が存在しています。
*この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
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*barman / PIXTA(ピクスタ)
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