電車へのベビーカーの持ち込み、乗り入れについて、昨今、「折りたたまずに乗せるのはマナー違反」「通路を塞いで迷惑」などと批判が高まっており、乳幼児を抱える母親らとの間で、論争が巻き起こっています。
ベビーカーがかなり大きいものであることは間違いありませんが、果たして、持ち込みについて法規制はないのでしょうか。また、この問題について解決策はないのでしょうか。
今回はこの点について考えてみたいと思います。
■そもそも電車に持ち込んで良いの?
電車に持ち込める手回り品の大きさについては、各鉄道会社が個別に定めております。JRを例にとると、1辺の長さが最大2メートル以内で、かつ3辺の長さの合計が最大2.5メートル以内、重さ30キロ以内のものを2つまで持ち込める、と定められています。私鉄各社でも同様のルールとしているところが少なくないようです。
ベビーカーの多くはこのようなサイズを超えておらず、持ち込み自体には問題はないといえます。
また、国土交通省は、昨年3月にはベビーカーを電車などの公共交通機関内に持ち込む際には折りたたまなくて良いという共通ルールを発表。また、2017年度には電車内で折りたたまずに優先的に置ける車両を作るために、バリアフリー法の基準改定が進められています。
これは、手荷物を抱えた状態で子供を抱っこし、かつベビーカーをたたんだ状態で乗車することが危険と判断されたためです。
■電車利用者との「摩擦」を避けるためには何が必要なのか
上記のようなルールを作ったからといって、すぐに「摩擦」が解消されるわけではないでしょう。
確かに、小さな子供を抱えて外出する際の荷物の多さを考えれば、ベビーカーは必需品ではあります。しかし、電車内の狭い通路にベビーカーが置かれていると、他の客の乗降に支障をきたすことも否定できません。
優先スペースを作るといっても、車椅子と分けて作ることは難しいでしょうし、時間帯によってはそこに多くの客が立ってしまうこともありえます。もっときめ細かな対処をしていかなければ、この問題は、なかなか収束しないと思われます。
■ベビーカーの大きさも問題点のひとつ
個人的には、まず、メーカーがベビーカーの小型化に努めることが必要ではないかと思われます。
最近の論争の要因には、ベビーカーが大型化したことも挙げられています。小型化を進めることによって、電車内のスペースを確保することができるようになれば、他の乗客の「邪魔」という感覚も軽減されるのではないでしょうか。
都市部では、駐車場の料金が高くて、子育て世代が自家用車を所有するのが困難という問題もあります。また、モラルにばかり頼っていても、発生した問題を解決することはできません。
ベビーカー所有者が公共交通機関を使わざるを得ないということを前提とした上で、鉄道会社やベビーカーメーカーが解決のためのアイデアを出していくことが必要ではないかと思われます。
*この記事は2015年4月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
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