就活でストレス・・・電車に生卵を投げた男性はなぜ「軽犯罪法」で立件された?

先日自宅マンションから線路内に数十個の卵を投げ落としたとして、大学4年生が軽犯罪法違反で書類送検されました。

就職活動がうまくいかず、むしゃくしゃしてやったとのことです。極めて身勝手な動機で、同情の余地はないのですが、それはさておき、送検された際の罪名が「軽犯罪法」となっています。

「軽犯罪法」とはあまり耳慣れない法律だと思いますが軽犯罪法は比較的軽い犯罪を罰する法律で、具体的には「働く能力がありながら……住居を持たないで諸方をうろついたもの」「こじきをし、又はこじきをさせた者」「街路又は公園……で大小便をし若しくはこれをさせた者」などの行為を禁止しています。刑も拘留(1か月未満の懲役のこと)または科料(1万円未満の罰金のこと)のみです。

今回学生の行為は「相当の注意をしないで他人の身体又は物件に害を及ぼすところに物を投げ……た者」として軽犯罪法で立件されたようなのですが、よくよく考えてみるとこの学生の行為はもっと重い罪に当たりそうです。ではなぜ今回は重い罪ではなく軽犯罪での立件となったのでしょうか。

カ電車駅山手線プリコーン / PIXTA(ピクスタ)

●軽犯罪法ではなく「往来危険罪」にはなぜならなかった?

そもそも鉄道の運行を妨害した場合は、軽犯罪法とは別に刑法で「往来危険罪」という罪が規定されています。この法律は、電車の往来の危険を生じさせた者に対して2年以上の懲役が科せられます。具体的には線路内の置石行為などがこの犯罪に該当するのですが、軽犯罪法とは違って非常に重い罪です。

学生の行為はこの往来危険罪が適用されてもよさそうなのですが、投げた物が生卵であり石のように硬いものではなかったこと、実際に電車に卵が当たっておらず運行に影響がなかったことなどの事情から判断し、往来危険罪の適用を見送ったものと思われます。

 

●器物損壊罪にもならない理由

また、器物損壊罪は、実際に電車や線路が壊れていない以上適用されません(卵は学生自身のものですから割れても犯罪ではありません)。通行人に卵が当たってもいるため、傷害罪の適用も考えられますが、卵が当たって実際にけがをした人はいないようですので、傷害罪も成立しないと思われます。

というわけで、学生の行為はこれらの犯罪に該当する可能性が低く、とはいっても学生をこのままおとがめなしで済ますわけにもいかず、そのため警察もやむを得ず軽犯罪法で立件し、書類送検せざるを得なかったものだと推測されます。

とはいうものの、生卵であろうと一歩間違えれば大事故になる可能性のある極めて危険な行為であることは間違いありません。線路内に物を投げたり置いたりする行為は大惨事につながりかねませんので、絶対にやらないようにしましょう。

 

*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)

山口 政貴 やまぐちのりたか 弁護士

神楽坂中央法律事務所

東京都新宿区津久戸町4-1 ASKビル2-B号室

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