僕は、離婚や不倫の案件の記事を多く執筆しているということもあり、記事を見た人などから、不貞行為、いわゆる浮気を理由に配偶者と離婚をしたいという問合せやご相談、ご依頼を多く受けています。
一言に不貞行為に基づく離婚といっても、当事者によってその内容は千差万別ですが、一般的に共通する特徴もあります。
そこで、今回は、不貞行為を理由に離婚をしたいという相談を受けるにあたって、僕が、特に重視しているポイントを3点、お伝えしたいと思います。
●(1)本当に離婚するつもりがあるのか?
不貞行為を理由に離婚を考えている相談者の多くは、配偶者による不貞行為が発覚した直後に事務所に相談に来られて、相手とはすぐにでも離婚したいと考えている方です。
相手の不貞行為は許せないのが普通なので、そんな相手とはこれ以上結婚生活を続けられないと思うのが自然です。
ただ、ある程度時間をおいて改めて考えた結果、子どものことを考えると離婚までするのは控えたいといった場合や、相手が反省しているので今回に限っては許すといった場合もあります。
そのため、相手の不貞行為発覚直後に相談に来られる方や、相談の際に少しでも離婚に躊躇している相談者の方からのご依頼については、基本的にはその場で受けるということはしません。
そのような相談者には、ある程度時間をおいて、本当に相手と離婚するつもりがあるのかを改めて考えていただいたうえで、再度事務所に来てもらうということにしています。
●(2)不貞行為を立証する客観的な証拠はあるのか?
相手が不貞行為をしているといくら主張しても、相手がその事実を認めない限り、不貞行為を立証するための客観的な証拠がなければ、不貞行為に基づく離婚や慰謝料請求は認められません。
不貞行為を立証する客観的な証拠としては、不貞相手と一緒にラブホテルに入っていくところの写真、不貞相手との間のメールやLINEのやり取り、過去に配偶者が自分が不貞行為をしたことを認めた謝罪文や念書などです。
そのため、相談を受ける際には、不貞行為を立証するための上記のような証拠が存在するかどうかを確認するようにしています。
●(3)相手に支払能力はあるのか(強制執行可能な財産はあるのか)?
不貞行為の証拠もあって、裁判をした場合に勝てる見込みが高い案件であっても、相手に慰謝料を支払う資産や能力がない場合があります。そのような場合でも離婚自体は認められますが、慰謝料を回収することは困難です。
この点、相手が会社員や公務員であれば、慰謝料を任意に支払わない場合には、強制執行をして給与債権を差し押さえることによって慰謝料を回収することが可能です。
しかし、相手が無職の場合には、そもそも差し押さえるべき債権が存在しませんし、相手が自営業者の場合には、会社から報酬をもらっていたとしても社長である自分の判断で自分の報酬を0円にすることや減額することはいくらでも可能なので、強制執行によって回収することは難しいということです。
そのため、離婚に加えて配偶者に対して慰謝料も請求したいという相談を受ける場合には、判決等になった場合に相手には慰謝料を支払うだけの資産があるかどうかということと、相手の職業について確認するようにしています。
今、離婚を考えている方は、まずは上記の3つのポイントをもう一度よく考えてみることをお勧めしますが、まずは相談に来ていただいて、自分の気持ちや感情を一度整理するということが一番重要なのかもしれませんね。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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