安保法案の成立阻止を訴え、国会議事堂前でハンガーストライキ(飲まず食わずで座り込み訴える方法)を実行するために集まったデモ隊が、点字ブロックの上に居座っていることが問題視されました。
「 盲目の人は考えていないのか?」などと批判されていますが、点字ブロックを塞ぐ行為は法的に見て問題はあるのでしょうか?検討してみましょう。
■国レベルでの刑事罰はない
デモ隊が、点字ブロック上で居座る行為を直接的に処罰する法律はありません。
点字ブロックは、国土交通省のガイドラインである「視覚障害者誘導用ブロック設置指針・同解説」及び「道路の移動円滑化整備ガイドライン」に基づき、各自治体の条例等を根拠に設置されています。
国レベルの指針は、ガイドラインですから、点字ブロックに関する直接的な罰則は当然なく、設置根拠を定めている自治体条例も、基本的には点字ブロックに関する罰則は設けていないことが多いようです。
国の法律レベルでは、道路の無許可占用をした場合には、道交法違反の罰則がありますが、デモ行動の場合には、事前に許可を受けているはずでので、違法とはなりません。
結局のところ、点字ブロックを塞ぐことを直接処罰対象とする法律は国レベルでは存在しません。
もっとも、各自治体が条例で、違反者に罰金等を科す規定を設けることは、可能と考えられます。
点字ブロックが存在する自治体の条例において、点字ブロックを塞ぐ行為を刑事罰の対象として禁止している地域の場合には、条例違反として罰金等を科されます。
■民事上の責任
点字ブロックを塞ぐ行為によって、視覚障害者が歩行に困難をきたし、転んで怪我をした場合、点字ブロックを塞いでいたデモ隊には、民事上の責任が発生します。
少なくとも、視覚障碍者が点字ブロックに沿って進行してきたのを知りながら、点字ブロック上を塞ぎ続け、視覚障害者を事実上、危険な非点字ブロック上で歩行させた場合には、過失による不法行為責任に問われる可能性があるでしょう。
仮に、視覚障害者が車道を進まざるをえない状況を作り出し、不幸にも自己が起きた場合には、多額の賠償義務を負うケースもあります。
デモ隊が、点字ブロック上に居座る行為自体を直接処罰する法律はありませんが、少なくとも、視覚障碍者が歩行していたら、点字ブロック上の道を譲る配慮が求められます。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)