同棲していた恋人と喧嘩をして恋人と別れることになり、荷物を持たずに恋人の自宅を飛び出してしまったり、色々と忘れ物をしてしまったというケースもあるかと思います。
その様なとき、後になって残した荷物を取りに、合鍵を使って元恋人の自宅に立ち入ると法的に問題となるのでしょうか?
恋人の明示的な承諾なしに恋人の自宅に入る行為が住居侵入罪(刑法130条前段)に当たらないかどうかが問題となります。
●「正当な理由」なのか?
まず、住居侵入罪は「正当な理由」なく、他人が管理する住居に立ち入った場合に成立します。「正当な理由」とは、住居管理権者の承諾があるような場合です。
上記の承諾には、明示的な承諾のほか、黙示的な承諾(推定的承諾)も含まれます。
それでは、元恋人の家に合鍵を使い立ち入る行為に、自宅を所有している元恋人の黙示的な承諾があるといえるのでしょうか?
●住居侵入罪が成立する可能性が高い
この点、別れた後は、元恋人とは会いたくもないし、自宅にも立ち入って欲しくないという意思を有するのが通常なので、元恋人が荷物を取りに自宅に立ち入ることに対して、明示的な承諾はもとより、黙示的な承諾もないと言えます。
そのため、合鍵を使って元恋人の自宅に立ち入る行為は、住居侵入罪が成立するものと考えます。
以上より、元恋人の自宅に自分の荷物が置かれたままである場合には、合鍵を使って元恋人に黙って立ち入るのではなく、事前に、元恋人から自宅への立入りについての承諾を得る必要があるということになります。
同棲中は自宅だったとはいえ、元恋人が所有している家に入れば、悲しい事に罪に問われてしまうこともあるでしょう。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)