筆者は法テラスが運営する法律事務所に4年6か月ほど勤務していました。高額とはいえない給料制で、しかも困難な事件も多かった法テラスで、なぜ筆者が4年6か月も働いていたのか、なぜ辞めたのか。
そして、勤務弁護士のモチベーションはどんなことなのか、今回はその点についてお話しします。
■刑事弁護への想いと周囲の支え
筆者が弁護士を目指した動機は、子どものころに見たテレビドラマでした。
真摯に刑事弁護に取り組む主人公の弁護士の姿に大きな衝撃を受けたのです。国選の刑事事件の担い手たることは、法テラスの勤務弁護士の業務の柱のひとつでした。給料制であれば、もうけを気にせずに、刑事弁護が思う存分できると思い、勤務弁護士となりました。
最初に配属されたのは、名古屋にある法テラス愛知法律事務所でした。配属されたころは、国選事件の対象が拡大され、かつ裁判員裁判が始まる少し前の時期でした。弁護士会の会員数が多い名古屋でも、国選事件の担い手は足りていないといわれていました。配属されていたころは、「人手が足りない」と国選の事件がよく回ってきたものです。
回ってくる事件は、なぜか、手間暇がかかるものばかりでした。しかし、弁護したことにより刑が軽くなることもありました。会いに行ったり話を聞いたりしただけで、「ありがとう」と喜んでくれる被疑者被告人もいました。事件の後に近況を知らせる手紙をくれる人もいました。そんなことが嬉しく思えました。
不在がちな筆者に代わって、担当の事務員さんは、しっかり事務所を守ってくれました。法律事務所に隣接した地方事務所(民事法律扶助や総務などを担当する部署)の職員の方が、気遣って顔を出してくれることも頻繁にありました。休憩室で一緒にお昼を食べることもあり、励ましてもらうことも多々ありました。
やりがいがある仕事と周囲の人の温かいまなざしが、法テラスで働くモチベーションでした。
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