ネット上で「前職では謎の天引きがあった」として、内容について語った人の話が話題となっていました。
そこでは「会社勤務感謝金として8500円、会社設備使用料1500円、会社駐車場料金1000円、職場環境向上費500円が天引きされていた」などと書かれています。
会社勤務感謝金という訳のわからない内容はともかく、その他の設備使用料などに関する天引きに違法性はないのかと疑問に思うかもしれませんが、どれも賃金の全額払いの原則に違反するので違法です。
■全額払いの原則
賃金は労働者の生活を支える重要なものですので、使用者は原則としてその全額を支払わなければならず、訳の分からない天引きをすることは許されません。
違反した使用者には30万円以下の罰金が科せられることもあります。
■例外もある
例外は、法令に別段の定めがある場合と労使協定の定めがある場合です。
法令に別段の定めがある場合としては、所得税や社会保険料などの源泉徴収の場合です。税収確保の要請から認められている例外です。
労使協定とは、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合や労働者の過半数を代表する者との書面による協定です。
使用者は、労使協定により賃金から組合費を控除して組合に渡すことができます。労働組合の存続のために認めれている例外です。
使用者が法律を知らないからか、知っていてもなのか、訳のわからない控除がされている場合がありますので給与明細をよく見て確認した方がいいでしょう。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)