参加者が「詐欺だ」と激怒している「サンタフェス」…違法性は?

2014年12月23日に「サンタクロースミュージックフェスティバル」なるものが開催されました。

最近では、「カラーラン」や「エレクトリックラン」といった、みんなで楽しくランニングするイベントが人気になっており、このサンタクロースミュージックフェスティバルも「お台場をサンタクロースで埋め尽くす」と謳い、ランニングと音楽フェスを融合したイベントとして企画されたようです。

具体的な内容としては、最大10,000人規模で、全員サンタクロースの衣装を身にまとい、1~2km程度のランニングをした後に、集まって音楽フェスを楽しむというもの。いわゆるほかのランニングイベントと似たようなものになっており、参加者の多くは期待して当日を迎えていたようです。

サンタクロース(画像:海外でのイベントの様子)

しかし、その実態はまったく異なるものだったと話題になっています。

10,000人規模という告知に反して参加者数はほとんどおらず、ランニングもただ道を散歩させられるだけだったというのです。さらに、大規模な音楽フェスといわれていたにもかかわらず用意されていたのは、1台のPCと小型のスピーカーだけだったようです。

ネット上では、これでは「まるで詐欺じゃないか」と参加者たちからの訴えが相次いでいますが、このようにうたい文句と実際の内容が異なっていた場合、詐欺罪が成立するのでしょうか。

 

■詐欺罪の成否について

結論としては成立しにくいと考えます。

詐欺罪は、人に嘘をついて、人に勘違いさせ、人にお金等の財産的価値があるものを交付させて損害を与えた場合に成立する犯罪です。

そして、詐欺罪が成立するためには、こうした「人に嘘をついて、人に勘違いさせ、人にお金等の財産的価値があるものを交付させて損害を与える」ことについて、主催者が認識しそれでも構わないといった場合でなければいけません。

主催者が何もせずお金を回収するだけのつもりだったのであれば詐欺罪は成立するでしょう。

しかし、本件の場合、主催者は、受付を設ける、一応会場を設けている、2つとはいえ長テーブルを用意している、小型でノートPCに繋いだだけのものとはいえスピーカーを用意している、しょぼいあるいは有料とはいえ出し物も一応用意しているようです。

確かにお台場がサンタクロース埋め尽くされたわけではありませんし、およそ参加者が満足できるようなレベルとは言えないのでしょう。

しかし、主催者に参加者を騙すつもりもなく、ただ実際やってみたら予算が合わなかったり思ったほど集客できなくて企画通り運営することができなかっただけのことかもしれません。

その場合、主催者自身に人を騙しているという認識がなく、詐欺罪は成立しにくいのではと考えるわけです。

 

■不当景品類及び不当表示防止法違反について

また、不当景品類及び不当表示防止法という法律があり、この法律は、供給するサービスについて、サービスの品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると表示してはならないとしています。

そして、同法律は、消費者庁が違反者に違反行為をやめなさいという措置命令を出せると規定しており、さらに措置命令に違反した者に対する罰則も定めています。

しかし、主催者に実際のものよりも著しく優良であると表示している認識がなく、実際やってみたらしょぼくなってしまっただけであるとすれば、消費者庁からの措置命令はあるかもしれませんが、刑事罰を受けることまではないと思います。

 

■民事上の責任追及

以上のように主催者に対する刑事責任の追及は難しいと考えますが、主催者は、「お台場をサンタクロースで埋め尽くす」、「1キロ~2キロ程度を最大10,000人規模の仲間達とハイタッチをしながら回りきり」、「芋煮や焼きそばなど」と宣伝していたわけですから、これらの謳い文句が契約の中身になっているとすれば、宣伝通りできなかった約束違反があるともいえます。

そこで、 納得いかない参加者としては、そうした約束違反を理由に、契約を解除するから料金を返せとか、損害を弁償しろといった請求をしていくことが考えられます。

そうはいっても回収が困難である場合も多いので、こうしたイベント参加については、参加する前に誇大広告である可能性はないか、疑って検討した方がいいと思います。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*画像:ToskanaINC / Shutterstock.com

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

東京都千代田区霞が関3‐3‐1 尚友会館4階

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