福岡県であった強姦事件の容疑者らが不起訴となり、不起訴となった理由を検察が「言えない」と発表したこともあり、ネット上では「なぜ?」「怖い」「示談?」などと色々言われています。
逮捕されて数日で、「不起訴になりました、理由は言えません。」と言われたら「何か裏があるのでは…?」などと疑う方もいるかもしれません。
そこで、今回、このように不起訴となる場合はどういう時か、また、理由が言えない理由は何なのか、どのような理由が考えられるのかについて、解説してみたいと思います。
■不起訴処分とは
不起訴処分は、公訴を提起しない処分のことをいいます。
被疑者は、公訴を提起されないので、被告人となりません。つまり、処罰されないことになります。
■不起訴処分の種類
不起訴となる場合は色々あります。
(1)訴訟条件を欠く場合
訴訟条件とは、検察官の公訴が適法であるための条件、裁判所が審理・判決するための必要条件のことです。
訴訟条件を欠く場合というのは、被疑者死亡、日本の裁判所に裁判する権利がない、親告罪について告訴がないか無効または告訴が取り下げられた、同じ事件について既に確定判決が出ている、同じ事件で既に公訴を提起している、時効が完成している等、裁判をするための前提条件が欠けている場合です。
このような場合、公訴が不適法となり、裁判所が審理・判決するための必要条件もないので、検察官は不起訴とするわけです。
(2)被疑事件が罪とならない場合
被疑事件が罪とならない場合とは、被疑者が14歳に満たない、被疑者が犯行時心神喪失であった、被疑事実が犯罪にならない、正当防衛であることが明白等の理由で罪とならない場合です。
この場合、当然ですが検察官は不起訴とします。
(3)犯罪の嫌疑がないか嫌疑不十分な場合
犯罪の成立を認定すべき証拠がないか証拠が不十分な場合です。
検察官は、被疑事実が的確な証拠によって有罪判決が得られる見込みのある場合にのみ公訴を提起すべきとされています。
そこで、証拠がない場合はもちろん証拠が不十分な場合にも、検察官は不起訴とします。
(4)犯罪の嫌疑がある場合の不起訴
犯罪の嫌疑がある場合でも不起訴となる場合があります。
法律上刑が免除される場合や被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、示談等の犯罪後の状況によって公訴を提起するまでもなく起訴猶予が相当の場合です。
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■不起訴理由について
法律上、検察官は、告訴、告発または請求があった事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人らの請求があるときは、速やかにその理由を告げなければならないとしています。
これは、告訴人等の利害関係人に不起訴処分の理由を知らせるものです。
しかし、検察官は、これら以外の者に対して不起訴処分の理由を知らせる必要はありません。
むしろ、不起訴理由が記載された不起訴裁定書・不起訴記録については、被疑者その他関係者の名誉の保護などの見地から閲覧させるべきではないとされています。
■理由が言えない理由と想定される不起訴理由
不起訴理由として想定されるのは、あくまで憶測になりますが、被害者の協力が得られず嫌疑不十分とせざるをえない、あるいは、示談が成立し加害者も反省しており被害者も被疑者の処罰を望んでおらず起訴猶予が相当といったところではと思います。
不起訴理由が言えない理由も、不起訴理由を公表すべき必要性がそれ程認められず、かえって不起訴理由を公表することによって被害者その他関係者の名誉を害することになりかねないという配慮によるものだと思います。
刑事ドラマでよくあるような政治家とかからの圧力とかではないことは確かだと思います。
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*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)