1月27日に米紙ニューヨーク・タイムズが報じたところによると、米英の情報機関がスマートフォンのアプリを通じて情報収集を行っていたそうです。
話題となったスノーデン容疑者から提供された機密文書に基づいた報道で、Googleマップ、Facebook、Twitterといったアプリを利用して個人情報を収集していたとのことです。
対象のアプリを開くたび、位置情報、年齢、連絡先のリストといった情報を吸い上げていたということなので、もし事実だとすれば非常に恐ろしく、また腹立たしい事態です。
しかし、このようなアプリによる情報収集は、私たちの身近でも実際に起こっています。このような状況への理解を深めるため、アプリを使用した情報収集の問題について、解説したいと思います。
アプリを使用した情報収集と一口にいっても、いくつかの類型に分けることができます。
(1)ある機能を謳っているがその機能はなく、端末内データを収集する目的・機能しかないもの
(2)端末内データを収集する機能が付属しているが、そのことが表示されているもの
(3)端末内データを特定の第三者に送信することを目的とするもの(例:一時話題になった「カレログ」)
では、これらのアプリを用いた情報収集は、法的にどのような問題があるのでしょうか。
■1:ある機能を謳っているがその機能はなく、端末内データを収集する目的・機能しかないアプリ
これについては、その作成者や提供者に、不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪、刑法168条の2)が適用されます。
この罪はもともとコンピュータ・ウイルスの取り締まりのために制定されたもので、正当な理由なく、不正な指令を与えるプログラムを作成・提供・供与した者を処罰するとされています。
このようなアプリは、利用者の意思に反して、端末内データを勝手に送信するわけですから、正当な理由なく、不正な指令を与えるプログラムであるといえることになります。
なお、罪は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。
■2:端末内データを収集する機能が付属しているものの、そのことが表示されているアプリ
これについては、端末内データを収集することが表示されている以上、現状、違法とはならないと考えます。
アプリのインストール前に十分説明を読まない方も多いだろうとは思いますが、アプリを使うためには、その説明に「同意」することが必須となっているはずで、したがって端末内データの収集に関しても同意を与えてしまっているということになるからです。
■3:端末内データを特定の第三者に送信することを目的とするアプリ
アプリのダウンロード時に端末利用者の同意(ないし黙示の同意)があれば問題がありませんが、そうでなければ、その端末は端末利用者の「意図に反する」挙動を取ることになります。この点を重視すると、端末利用者の同意がない場合には、ダウンロードをした者には不正指令電磁的記録供用罪が成立し得ることになります。
以上,簡単に見てみました。
アプリの説明だけでは、その説明が本当のことを言っているのかどうかということはなかなか判断できません。そのため、アプリのレビューを読んで、問題あるアプリでないかを確かめるようにしましょう。
また、ダウンロード時にはどのような端末内情報が提供されるのかということもきちんと確認し、提供したくない情報が含まれているようであれば、アプリをインストールしないという選択もできるようにするべきでしょう。