日テレに内定をもらった女子大生が、過去に銀座でバイトをしていたことが明らかになったことを理由に、内定取り消しとなったというニュースがありました。
そして、内定取り消しとなった女子大生が日テレを訴えたことも合わせて話題となっています。
しかし、銀座でバイトをしていたというだけで内定取り消しに値するのでしょうか?そして何よりも銀座に失礼な話ですね。それはさておき、まずは、内定とは何かから説明しないといけませんね。
●内定とは何か、取り消しはできるのか
正確には、採用内定といいますが、これは労働者が働くのは大学卒業直後とし、それまでの間に企業と学生が取り交わした誓約書に記載されている採用内定取り消し事由があれば会社が解約することができることを約した労働契約ということになります。
取消事由としてよく書かれているのは、大学を卒業できなかった場合というのが典型例ですが、その他にも解約の事由が社会通念上相当として是認することができるものである場合であれば取消が可能になります。
具体的には、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であり、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められなければなりません。
●経歴詐称はどうなる?
よく問題になるのが、「提出書類の虚偽記入」というのがあります。経歴詐称などがあたります。
しかしながら、ある裁判例では、在日朝鮮人であることを隠して応募書類の氏名・本籍欄に虚偽を記入し採用されたのですが、後に正直に話をしたことで内定取り消しになった例について、「その内容・程度が重大なもので、信義を欠くようなものでなければならない」とし、この件では「国籍を理由とする差別的取り扱い」であって、内定取り消しは無効との判断を示しました。
これと比べて、日テレの件は、「銀座でバイト」しかも、親族のお手伝いを数日間しただけであるにもかかわらず、その経歴を書かなかったというだけで、内定取り消しになるのは、全くもってその内容・程度は重大ではなく、信義を欠くようなものとはほど遠い、と言うしかありませんし、内定取り消しは客観的にみて不合理というほかありません。
●さいごに
ということで、この裁判は是非取消を受けた方に勝って欲しいところではありますが、実際のところ日テレに入社できたとしても、ギクシャクしそうですね。人事は、この事件を教訓に、もっと慎重に事を運ばなければなりませんね。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)