先日、男子高校生が電車内の女性を盗撮して「今日電車で目の前に座ったとびきりのブスをあげるよ(´・_・`)」「目の前に座られるとしにたくなるよマジで」などとツイッターに投稿しました。
ツイッターなどに無断で人の写真を掲載することはまだしも、「ブス」などの中傷にあたる言葉も投稿しています。そこで今回は、男子高校生のこのような行為が犯罪になるかどうか、解説したいと思います。
■名誉毀損
結論から言いますと、被害者が怒って告訴すれば、ツイッターに投稿した男子高校生は名誉毀損という非行事実を理由に保護処分を受ける可能性があります。
名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です(刑法230条1項)。
名誉毀損罪が法律で刑罰を科してまで守ろうとしている利益は、人に対する社会的評価です。
「公然」とは、不特定または多数の人が知り得る状態におくことを意味します。ツイッターへの投稿は、公衆の目に触れる状態におくわけですから、「公然」の典型例です。
名誉毀損は、公然と「事実を摘示」して人の名誉を毀損した場合に成立するわけですが、漫画や写真による表現も「事実の摘示」にあたると考えられており、被害女性の顔写真をツイッターに投稿して公衆の目に触れる状態においた場合も公然と「事実を摘示」していることになります。
名誉毀損とは、人の社会的評価を低下させるような行為をいいますが、男子高校生は、被害女性の顔写真を付けてブスと述べることによって、被害女性の社会的評価を低下させるような行為を行ったということができます。
以上より、男子高校生は、名誉毀損という犯罪に該当する行為を行ったということができます。
■名誉毀損罪は親告罪
ただし、名誉毀損罪は親告罪であり(刑法232条1項)、検察官は、被害者が告訴しなければ公訴を提起することができません。
したがってまた、警察も、被害者が告訴しなければ、捜査のために犯人を逮捕したり取り調べたりしないのが普通です。
■加害者が未成年の男子高校生である場合
名誉毀損罪に該当する行為を行った場合、行った者は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」という形で処罰される可能性があります。
しかし、本件の加害者は男子高校生という話であり、未成年であると考えられます。
未成年者は、よほど重い犯罪を行った場合でなければ、懲役・禁錮・罰金といった刑事処分を受けることはありません。
もっとも、犯罪を行った14歳以上20歳未満の者も、犯罪少年であるとして成人と同じように捜査機関の捜査を受けることはあります。
したがって、男子高校生でも、逮捕されたり勾留されたりして取調を受ける可能性があります。
また、刑事処分はなくても、家庭裁判所に送られて観護措置を受け、保護観察・少年院等施設への送致といった保護処分を受ける可能性があります。通学している高校から退学・停学・戒告といった処分を受けるかもしれません。
そういうことですので、相手のためにも自分のためにもこの様な行為は絶対にしないでくださいね。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*画像は当該ツイートのスクリーンショットに当サイトがモザイクをいれたもの。