様々なテレビ番組で一般人として色々な事件についてコメントしている女性が話題となってます。
ネット上では「そういうバイトの人でしょ」「マジで何者なんだ?そういう職業でもあるのか?」「どんだけこういう場に行ってるんだよ」などと色々言われている様です。
ところで、報道機関がスタッフや劇団員等に一般人のふりをさせ期待通りのコメントをさせることに問題はないのでしょうか?
この点、結論を先に言うと、問題はあり非難されるべきではあるが、犯罪には当たらないと考えます。
■報道機関の報道の自由
憲法20条1項は表現の自由を保障していますが、国民の知る権利も保障しています。
国民の知る権利が保障されていると言っても、国家権力が報道機関の報道に対し不当な干渉を行った場合、情報は国民に届かず、国民の知る権利は充たされません。
そこで、国民の知る権利を確保するための報道機関の「報道の自由」も、この憲法20条1項によって保障されています。
■放送法の規制
放送法4条は、放送番組の編集に関して、(1)公安及び善良な風俗を害しないこと、(2)政治的に公平であること、(3)報道は事実をまげないですること、(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを放送事業者に義務づけています。
これは、放送事業者の報道が、国民みんなのものであり、また国民に与える影響力は大きいのだから、放送事業者は、虚偽の事実の報道や偏見に基づいた報道を慎まなければいけないということです。
報道機関がスタッフ等に一般人のふりをさせ期待通りのコメントをさせることは、この放送法4条に違反し問題があります。
しかし、放送法は、この4条に違反した場合について、罰則を定めていません。したがって、名誉毀損等の他の犯罪に当たらない限り犯罪に当たりません。
問題がある報道は、放送倫理・番組向上機構により審理され、再発防止等を求められるだけです。報道機関側による自主規制です。
これは、報道機関の報道の自由が憲法上保障されていることから、報道機関の報道に不当な干渉が入らないようにするためです。
しかし、報道の自由といっても、何を報道してもいいわけでないのは当たり前です。
報道機関は、報道の自由を保障されているわけですが、報道内容に責任を持ち、自らを律していくことが求められると考えます。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)