定期券のエリア内で営業に行って、勤務先に交通費を精算してもらうことはアリなのでしょうか?アリでない場合、どうなるのでしょうか?
今回は、こうした問題について、解説してみたいと思います。
■旅費を請求する根拠
営業のための旅費を請求する根拠について、民法等の法律は明文で規定していません。
就業規則や労働契約に定めがある場合、個別の営業で勤務先の了解を得ている場合には、それらが根拠となります。
それらがない場合でも、従業員は雇い主の指揮命令に従って業務を行う関係にありますので、旅費でも勤務先の指揮命令によって必要なものは、本来的に勤務先が支払うべきものです。
例えば、東京で働いている従業員が、勤務先から福岡の誰々の所に行って営業してこいと言われたような場合、勤務先が飛行機料金等の旅費を出すのは当然と考えられるわけです。
したがって、従業員が本来的に勤務先が支払うべき旅費を立て替えて支払った場合、従業員は勤務先に対し旅費を請求することができると考えられます。
■旅費を支出していない場合
自分が持っている定期券のエリア内で旅費を現実に支出していない場合、就業規則・労働契約・個別の合意があれば、その内容次第になります。
就業規則・労働契約・個別の合意で「現実の支出」が要件となっているような場合、現実に支出していない以上精算を求めることは許されないと言えます。
就業規則・労働契約・個別の合意がないが、本来的に勤務先が支払うべき旅費である場合でも、「立て替えて支払ったこと」が要件ですので、精算を求めることは許されません。
■旅費の不正受給について
旅費を不正受給した場合、不正受給した従業員は、勤務先に返還する義務を負います。
それだけではなく、旅費の不正受給が勤務先の就業規則の懲戒事由に当たる場合、旅費の不正受給をした者は、勤務先から懲戒処分を受ける可能性があります。
参考ですが、通勤手当が支給されているのに自転車で通勤して通勤手当相当分を不正に受給した場合も同じです。不正に受給した従業員は、勤務先に返還する義務を負いますし、勤務先から懲戒処分を受ける可能性があります。
不正受給の額、動機、不正受給に至った経緯等によっては重い懲戒処分を受ける場合もあります。
旅費・通勤手当は正しく精算してもらいましょう。