お笑い芸人のエド・はるみさんが「死亡」したとする画像付きのデマツイートが出回り本人が激怒したと話題になっています。
似たような手口で同じくお笑い芸人の小島よしおさんも同様の事態に遭っており、こちらは「死亡説が出たけどそんなの関係ねえ!」などと応酬したというエピソードもあるようです。
匿名で利用が手軽ながら一度注目されれば歯止めが効かないほどの拡散力を持つtwitterなどのソーシャルメディアは、面と向かっては言いにくいことも言いやすいなど、これまでのモラルが通じなかったり、既存の法律では対応しにくい面を持っていると言えます。
有名人に異変があったと少数の友達同士で勝手に噂し合うのと、広く開かれたネット上で発言するのとでは、法律上の責任において何か違いがあるのでしょうか?検証してみたいと思います。
有名人に「異変があったのではないか?」ということを話すこと自体は、単なる噂話のレベルですのでそれが規制されるということは原則としてないといえます。これは、少数の友達同士で話していても、ネット上で話しているのでも特に変わりありません。
しかし、どのような表現であっても許されるということはなく、行き過ぎた表現については問題になることがあります。このようなネット上の言論に関して問題にし得る法律上の構成としては、基本的に名誉棄損、プライバシー侵害、名誉感情侵害が考えられます。
■名誉毀損と名誉感情侵害
名誉棄損は、公然と事実を摘示して、人の社会的評価を低下させると成立します。ネット上での発言については公然と事実を摘示しているといえますが、本件のように、いわゆる「死亡説」を流すことは、それが人の社会的評価の低下をもたらすかというと、それは微妙ではないかと思います。
しかし、本人にとっては不快であると思われるので、名誉感情侵害があり得るでしょう。
名誉感情も法的に保護されますが、主観的な感情を全て保護するわけにはいかないため、社会通念上許される限度を超える侮辱行為が名誉感情侵害を構成するとされます。
そこで問題は「死亡説」が流されることが、社会通念上許される限度を超えるかどうかです。この点はケースバイケースであろうとは思うのですが、「死んだ」という噂が流されれば、当人としては非常に不快に感じるであろうことは想定でき、また、死んだと言うことが社会通念上許されるかというと、一般的には許されないのではないかと思料されます。したがって、名誉感情侵害が成立するのではないかと思われます。
■プライバシー侵害はどうか
また一般的に、人の私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれがあることがプライバシーであるとされますが、人が死亡したかどうかというのは、人の私生活上の事実らしく受け取られるおそれがある事項といえます。
したがって、プライバシーによって保護される余地があり、死亡説が流されることにより、プライバシー侵害が成立する余地もあると思います。
■転載をしただけという言い訳は通らない
ところで、この件ではわざわざ新聞記事を加工した死亡報道の画像を用いて拡散していたようです。そして、責任を追及された本人は、自分が画像を加工をしたわけではないと主張しているようです。
では、このような言い訳は法的には認められるのかですが、結論的に、法的には認められない可能性が高いのではないかと思います。誰が加工をしたのかということはさておき、結局のところ、自身の意思で死亡説を流している(拡散している)のであり、その点についての責任は負う必要があるからです。
そして、一度拡散した以上、仮にその投稿を後で削除したとしても、行為自体は行ってる以上、責任を負うことになります。
安易な情報の拡散は不法行為になる可能性があるものなので、その点を意識しておく必要はあるのではないかと思います。