近年は覚醒剤や大麻など薬物を使用・所持した有名人が続々と逮捕され、衝撃が走っています。とくにNHK大河ドラマに出演が決まっていた女優が逮捕された余波は大きく、撮影のやり直しなどが行われ、莫大な違約金が発生する模様です。
逮捕された人物のほとんどが、人々から憧れを受けていた存在。そんな人物たちの「裏の顔」にショックを受ける人が続出しています。
一発アウト論が浮上
逮捕と同時にニュースバラエティ番組などで盛んに議論になっているのが、薬物犯罪者の復帰問題。元衆議院議員の杉村太蔵は、『サンデー・ジャポン』(TBS系)などで、「薬物犯罪をした犯罪者は一発アウト。芸能界に戻れると思ってもらいたくない」と主張しています。
これに爆笑問題の太田光や、タレントの今田耕司、さらには堀江貴文氏などが「一発アウトは薬物使用者の更生を妨げる」「馬鹿げている」と猛反論し、議論が繰り広げられました。
ネット上では「一発アウト論」を支持する人が多いものの、反対の声も根強いのが現状。この議論について、弁護士はどう考えるのでしょうか? 大本総合法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました!
弁護士はどう見る?
小野弁護士:「薬物に限らず、どのような犯罪であっても、それに手を染めた人(芸能人に限らず)には、更生の機会が与えられるべきで、「一発アウト」は厳しすぎると思います。「一発アウト」は、目には目を歯には歯をといった応報刑の考え方からの発想だと思います。現在の刑法は、死刑を除き、教育刑の考え方であり、無期懲役でも仮釈放で社会復帰の機会を与えているほどです。
社会復帰と言う意味では、職場が確保される必要があります。職場が確保されないと社会復帰は難しく、また犯罪に手を染めてしまうということがよくあります。芸能人の場合は、職場は芸能界ということになります。元の職場に戻れるということが、社会復帰への更生へのモチベーションになると思います。
元の職場へ戻すといっても、犯罪前と全く同じ地位、ポジションである必要はないとは思います。会社勤めの方の場合、刑法犯を犯すと流石に懲戒解雇となり、元の会社には戻れませんが、同業種の別会社への就職はできるかと思います。芸能界でも、同じ事務所への復帰はできないにしても、また小さな事務所に入り、一から這い上がることはできてもいいと思います。
芸能人の場合、一般人と違うのは、マスコミが注目しすぎるところにあると思います。「あの人は薬物で捕まったことがある人」というレッテルを貼られます。その意味では、そのような芸能人が再び芸能界で活躍することは、視聴者や子供たちに悪影響をより与えるという側面はあるかと思いますが、逆にそのようなレッテルを貼られた芸能人が、一から這い上がって頑張っているというポジティブな影響を与えるということもあるかと思います。
直ぐに復帰させるかどうかは問題だとしても、「一発アウト」ではなく、社会復帰へのモチベーションを与えるためにも、一度はチャンスを与えてもいいのではないかというのが、私の考えです」
様々意見があるが…
様々な意見のある「一発アウト論」ですが、「更生の機会が全く与えられない」ことは、弁護士から見ると「厳しすぎる」感じるようです。
*取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(大本総合法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)