信じられない人もいるかもしれませんが、昭和の時代はそこかしこでタバコを吸うことができる環境でした。灰皿ついた電車もありましたし、野球場の座席などでも喫煙可能でした。
ところが最近は受動喫煙防止の観点から分煙化が進み、喫煙所以外の場所でタバコを吸うことはできなくなりました。自治体によっては飲食店での喫煙を原則禁止する条例を制定し、厳しく制限しています。
分煙化は企業でも進む
分煙化は企業でも進んでいます。電車やイベント会場同様、かつてはデスクで自由にタバコを吸うことができる企業もありましたが、現在は殆ど見られなくなっています。
黙々とした煙のなかでは能率も上がらないうえ、健康を害する可能性もありますので、分煙化は当然のように思えます。ところが一部企業では、未だに分煙とせず、どこでも吸える企業が存在しているようです。
このような企業で働く非喫煙者は地獄と言わざるを得ません。仮に分煙化しない職場で働き、健康に支障をきたしてしまった場合、会社が責任に問われることはないのでしょうか? 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士にお聞きました。
■弁護士の見解は?
齋藤弁護士:「分煙体制が整わず、喫煙可能部屋での長時間の労働を強いられた場合には、就労環境配慮義務違反を主張できる場合があるでしょう。通常の雇用契約であれば、就労時間は長期間にわたります。受動喫煙を強制されることにより、疾患などに至る場合には、法人側に対する不法行為責任の追及は視野に入るでしょう。
ただし、企業側は、「不作為」による関与、すなわち、積極的に禁煙を実現するなどの作為義務を負うのかどうかが争点になってしまい、これに勝訴するのはハードルが高いといえるのが現状です。さらに言うと、実際に生じた疾患との因果関係など、争う際のハードルは高い主張になるといえましょう。
憲法上も、嫌煙権が、憲法13条や25条によって承認されるには、まだまだ議論が必要なように思われます」
■分煙化するほうが無難
タバコの煙は非喫煙者にとっては匂いがつくうえ健康被害をきたす耐え難いものです。快適な社内環境を保ち、能率をあげるなら、分煙化したほうがいいのではないでしょうか。
また、就労環境配慮義務違反に問われる可能性もあることを考えると、不要な訴訟を避ける意味でも喫煙所を設置するなどして分煙化するほうが無難ですね。
*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)