スマートキーを悪用し車を盗むリレーアタック 該当する罪は?

Thief breaking into car with fist in broad daylight

昨今リレーアタックという犯罪を耳にするようになりました。

これは自動車を盗む手段の一つで、自動車の鍵を遠隔で操作する「スマートキー」から出る微弱な電磁波を悪用して解錠し、盗んでしまうものとされています。

被害事例が増えつつあるといわれるリレーアタックですが、まだまだ耳慣れない犯罪だけに「どのような罪に問われるのか」という疑問を持つ人が多いようです。

そこでパロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に解説をお願いしました。

 

リレーアタックはどんな罪になる?

櫻町弁護士:「自動車を盗む新たな手法として、「リレーアタック」というものを耳にするようになりました。

例えば、時事ドットコムニュース2019年7月1日付記事(https://www.jiji.com/jc/article?k=2019070101110)で、「車に触れずに鍵の開閉ができる「スマートキー」の電波を拾い、車を盗み出した」、「微弱な電波を拾って悪用する「リレーアタック」の手口で、逮捕は全国初とみられる。」と報道されています。

裁判例においては、東京地裁平成30年 6月29日判例集未搭載(ウエストロー・ジャパン裁判例データベース2018WLJPCA06298014)に、「スマートキーから発信される微弱電波を中継して解錠するリレーアタックという手法も報じられているところである」という表現がでてきます。

リレーアタックの具体的な方法は、例えば、公益社団法人日本防犯設備協会が公表している「平成28年度自動車・オートバイ委員会活動報告書 平成29年6月」(https://www.ssaj.or.jp/jssa/pdf/car-bike_h28.pdf)では、「オーナーの車両に窃盗犯Aが無線中継装置を持って近付き、もう一方で窃盗犯Bが車両から離れたオーナーに近付き、例えば、カバンの中にしまってあるスマートキーに無線中継装置を近付ける。

こうすることで、車両側とオーナーの所持するスマートキーがあたかも車両の傍にあるかのような状態が作られてしまい、ドアは解錠された上に、エンジン始動が可能となり車両が盗まれるという手口である」と説明されています。

リレーアタックへの対応として、警察庁は「2016年春から、リレーアタックが今後、国内で行われる可能性を踏まえて各都道府県警への情報共有を行っており、各メーカーに対しては、リレーアタックに対する対策を検討するよう要請している」と報道されています(乗りものニュース2017年5月28日記事「「スマートキー」の電波をリレー? 海外で新手のクルマ盗 警察庁が注意喚起」(https://trafficnews.jp/post/71880))。

例えば、他人が駐車場に停めている自動車につき、そのロックを解錠し、エンジンを始動し、これに乗っていくという行為は、自動車という「他人の財物」を、その他人の意思に反して自己の事実上支配する状態においた、すなわち「窃取」したということで、窃盗罪が成立します(大判大正4年3月18日刑録 21輯309頁は、「刑法第235条に所謂窃取とは物に対する他人の所持を侵し其意に反して窃かにこれを自己の所持に移すことを云い其所持とは一般の慣習に従い事実上物を支配する関係をいうものとす」と判示しています)」

 

被害に遭わないよう十分注意を

自動車キーの遠隔操作を悪用するリレーアタック。

被害を受けないよう、十分注意してください。

 

*取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

櫻町 直樹 さくらまちなおき

パロス法律事務所

〒150-0011 東京都渋谷区東3-25-3ライオンズプラザ恵比寿711

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