会社経営者のIさんは、新人女性社員の扱いについて頭を悩ませています。人手不足から1人採用したのですが、勤務開始後すぐに妊娠が発覚しまったのです。
新人女性社員に与えられた仕事はデスクワークだけではなく、本社と工場を行き来する業務もあります。妊娠した女性に「無理はさせられない」と、仕事量を減らさざるを得ないそう。Iさんは「これでは戦力にならない」と考えています。
採用を取り消すことはできるのか?
「事前に妊娠を聞いていない」と採用の取り消しを考えているIさん。しかし、そのような対応を取ることは、「マタハラ」になるのではないかと頭を悩ませています。会社として「採用後の妊娠発覚」を理由に採用を取り消すことは可能なのでしょうか? ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解を伺いました。
森川弁護士:「入社時に妊娠の有無を言わなければならない義務はないと思われます。採用の取り消しは、難しいでしょう」
入社面接で「妊娠している」と申告する義務は法的になく、採用の取り消しはマタハラに該当する可能性が高いようです。
採用時に質問することは不適切?
Iさんは、入社面接時女性社員が妊娠していることを質問しなかった人事を「失態」と考えており、今後質問を義務付けることを検討しています。しかしこれも、人事部からセクハラに当たるのではないかとの指摘を受けました。
実際のところどうなのか、ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に聞いてみました。
森川弁護士:「質問すること自体、
やはり、面接時に「妊娠してる?」と聞くことは、差別やセクハラになる可能性が高く、不適切な質問となるようですね。
企業の対策は?
入社面接時に妊娠の有無を聞く行為や、採用後実際に働いた後妊娠が発覚した場合でも、採用の取り消しはできないことがわかりました。
女性労働者としては当然の権利ですが、会社経営者が困ってしまうことも理解はできます。企業として適法かつ有効な対策はないのでしょうか?
森川弁護士「妊娠をした従業員に産休を与えるのは当然ということになりますが、妊娠の有無ではなく、
事前にしっかり説明を
企業としては「妊娠している?」と聞くのではなく、事前に会社事情をしっかりと説明していくことが、最善の方法のようですね。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)