先日ネット上で「スーパー銭湯の男湯に女性従業員が入ってくることが不愉快。逆は犯罪なのになぜ許されるのか。男性のプライバシーは守られないのか」との意見が上がり、話題になりました。
現在の日本では女風呂に男性従業員が入ることは問題となりますが、女性従業員が男風呂に入ることは「よくあること」のようです。なぜこのようなことが許されているのか、少々不思議に思えます。
高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に、男湯に女性従業員が入る行為について、解説していただきました。
違法性はあるのか?
理崎弁護士:「私もよく銭湯にいきますが、その銭湯でも、女性の従業員が清掃等のために男湯に入ってくることがあります。
私は特に気にしたことはないですが、なかには女性に自分の裸を見られることに不快を感じられる男性もいらっしゃると思います。そこで、男湯に女性従業員が入ることの問題点について考えてみたいと思います。
まず、今までほとんどの男性は、女性従業員が男湯に入ってくることは「よくあること」と承知のうえで銭湯に来ていたので、女性従業員が男湯に入ってきても特に不快に感じる男性は少なかったでしょう。そのため、銭湯としても、女性従業員に男湯の清掃をさせることに関してこれまで特段の配慮はしてこなかったものと思います。
また、女性従業員が男湯の清掃をすることに関して、大多数の男性が特に不快と感じない以上、女性従業員に男湯の清掃をさせることは銭湯としての正当な業務の範囲内であるといえるので、特に違法性はなく、法的な問題までは生じないと考えます。
ただし、上記のとおり、自分の裸を女性に見られることに関して不快に感じる男性がいることも事実ですので、そのような方にも快適に銭湯を利用してもらうよう、銭湯としても配慮は必要だと考えます。」
一番良いのは同性に清掃させること
理崎弁護士:「一番良いのは、男性従業員に男湯を清掃させることですが、男性の従業員を確保することが難しい場合もあるでしょう。そんなときには、別の対応を考える必要があります。
たとえば、女性従業員が男湯に入ってくることを希望しない場合には、番頭さんにその旨を伝えれば、そのような男性が入浴中は、女性従業員に男湯の清掃等をさせないなどの対応をするとともに、銭湯の入り口等でもその旨の掲示をするなどの対応は十分考えられると思います。
難しい問題ではありますが、この記事を契機に、今後、この問題についての議論がさらに深まることを期待しています。」
同性には同性の清掃員が望ましい
気にしない人が多いのが現状のようですが、女性従業員が男湯に入ってくることを好まない男性が存在していることは、紛れもない事実。また、男湯に入らねばならないことをつらいと感じる従業員も今後出てくる可能性はあり得ます。
人手不足で致し方ない部分はあるのでしょうが、少なくとも営業中は同性の従業員が入るよう、施設側が配慮することが好ましいと言えそうです。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)