3月は引越しシーズン。新入学や新入社、さらには転勤などの影響で新たに賃貸アパートやマンションを借りたという人も多いのではないでしょうか?
そんな引越しシーズンは、トラブルも続発するもの。4月から新しい会社に勤務するBさんも、その1人です。
プレゼントの鍋が…
Bさんは賃貸マンションを内見した際、部屋に立派な鍋が置いていることに着目。不動産会社に聞くと、「これは大家(オーナー)からのプレゼント」といわれ、「お得」と感じ契約することを決めました。
ところがいざ引っ越してみると、鍋が見当たりません。不動産会社にメールで確認したところ、ハウスクリーニングの業者が廃棄してしまったとのことで、「諦めてください」と言われてしまいます。
小さなこととはいえ納得のいかないBさんはクレームを入れますが、返答は「管理会社のミス。プレゼントは大家からのもので、我々は感知していない」とのこと。鍋は諦めざるを得ませんが、「当初の話と違う」と責任を取ってもらいたいと考えているそうです。
このような場合、不動産会社に責任を問うことはできないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解を伺いました。
責任を問うことはできるのか?
冨本弁護士:「難しいと思います。大家さんからのプレゼントですので、法的には贈与ということになりますが、贈与については、書面によらず未履行(引き渡し前)の場合、契約としての効力が弱く、自由に解除することができます。大家さんが不動産会社の味方になって贈与を解除すれば、不動産会社に責任を問えません」
話を聞く限り不動産会社が代用品を用意するべきにも思えますが、やはり「プレゼント」であるだけに、責任を問うことは「無理筋」であるようです。
契約の解消はできる?
仮にBさんが「鍋がない」ことや、不動産会社と大家の言ってることの違いなどを不服として契約解消を申し出た場合認められるのでしょうか? 冨本和男弁護士の見解は…。
冨本弁護士:「契約の解消も難しいと思います。契約のメインはあくまで部屋の賃貸です。鍋の贈与はおまけにすぎません。したがって、おまけについて「言っていることが違う」だけで契約を解消するというのは難しいかと考えます。
もっとも、賃貸広告で「調理機器付き」等がうたわれていたような場合であれば、その場合「未使用・未開封の鍋のプレゼント」も賃貸契約の一要素となっていることが明らかですので、契約解消が有効となる余地も出てくるかと考えます」
Bさんの気持ちも理解できますが、「プレゼント」は「ボーナス」のようなもの。不動産会社の対応も適切とは言えないように思えますが、諦めるしかないようですね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)